ゴッホ展
響きあう魂 ヘレーネとフィンセント
2021/12/23(木) 〜 2022/02/13(日)
09:30 〜 17:30
福岡市美術館
2022/01/22 |
ゴッホは近代絵画の可能性を拡張した天才とされるが、功績の一つに明るい夜空を表現したことが挙げられよう。西洋では伝統的に、夜空は虚空の闇として表されてきた。
新しい絵画を目指して単身南フランス・アルルに居を移したゴッホは、到着後間もない4月に弟への手紙で「星月夜を描かねばならない」と宣言している。9月に「ローヌ川の星月夜」を描き、翌年6月に「星月夜」を、さらに翌年5月に「夜のプロヴァンスの田舎道」を描いた。これらをシリーズとして扱う文献は見ないが、私はこれらを「星月夜」3連作と考える。
題名に星月夜の語が入っていないのでシリーズと捉えにくいが、3作目も紛れもない星月夜の絵だ。ゴッホの絵の題名は後世便宜的に付けられたものなので、分類の基準にはならない。またしばしば変更されてきた。3作目には、2作目の星月と糸杉がそのまま継承され、手紙の中で「細い月の夜空の、最後の試み」と記し、連作の最終作であることを示唆している。
神経性の発作に苦しんだゴッホは、アルルの住民から危険人物として排斥運動を起こされた。近郊サン・レミの療養院への転出を余儀なくされ、そこで約1年を過ごした。3作目の星月夜はパリへ戻る直前の数日間に、南フランスの思い出の集大成として描かれた。星空の下、語らいつつ家路に就く農民を配している。
ゴッホが自分を冷遇したアルルの人々を恨むでもなく、慈しみを込めて最終作に描いたことは、彼の優しさの深さを知る上で注目に値しよう。
日本でのゴッホ像は激情の画家だが、欧米ではもう少し複雑だ。迫害された悲しみの人と捉えられている。典型は米国の歌手ドン・マクリーン氏の「ヴィンセント」。ゴッホの名を曲名とし、星月夜に寄せて画家の純心を歌う。
欧米の人々は、病に苦しむ同朋を排斥したことに対する自責の念が強いのだろう。
同じ傾向は2017年の英ポーランド合作映画「ゴッホ・最期の手紙」にも見て取れる。アニメーション作品だが最新の解釈から内面に迫る脚本は過去の実写映画をしのぐ。ゴッホが無窮の星月夜に託した思いを代弁している。
「ヴィンセント」の曲はここでも使われており、夜空の彩りを際立たせている。
(大串 誠寿・写真デザイン部編集委員)
=(1月19日付西日本新聞朝刊に掲載)=
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