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つくる展 TASKOひらめきをかたちに <下> 香るオルガン 音程ごとに22の匂い【コラム】

2023/04/08 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

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鍵盤を押すと、音程に合わせて奥の瓶に入ったさまざまな香りも放たれる「パフューマリー・オルガン」©TASKO Inc.(撮影・古瀬哲裕)

 「つくる展」で注目してほしい作品の一つに、≪パフューマリー・オルガン≫があります。鍵盤を押すと香りが会場の空気中に放たれ、鑑賞者の聴覚と嗅覚を刺激する世界でも珍しい楽器です。

 19世紀のイギリスの化学者セプティマス・ピエースが考案した香りの音階「香階(こうかい)」から着想を得ています。香階とは香りの軽やかさや重さを、音の高い、低いと連動するように、46の音程一つ一つに香りを当てはめて作る音階です。例えばかんきつ系の爽やかな軽い香りは高音、動物系の重たいイメージの香りは低音といった具合で組み合わせています。

 約150年前の化学者が考案した香階を実際にオルガンで奏でたらどんな香りがするだろう? 総合アートカンパニー「TASKO(タスコ)」は世界でも珍しい「香楽器」を創(つく)り出しました。

 本作品は、来館者が22音の鍵盤を押すと、連動している瓶のふたがスライドし、そこに送られた空気が振動によって音を奏でます。同時に、瓶の中に入っている香料が空気中に放たれる仕組みです。壁側に1列に並ぶ瓶のサイズは、音の違いを出すために大小さまざまです。中に入っている香料の量も細かく決められています。

 この作品の魅力は、奏でる曲によって放たれる香りが違うため、空中でそれぞれの香りが合わさり、さまざまな香りの調合を体験できるところです。来館者が実際に曲を奏でることができ、時間によって自動演奏を聴くことも出来ます。山形県酒田市美術館では「香りが良くて癒やされた」「オルガンを弾くと花の匂いがして楽しかった」などと多くの声が寄せられ、1番人気の作品でした。

 ところでこの作品は音程を保つため、ほぼ毎日スタッフがチューニングを行います。バラやシナモン、バニラといった一つ一つの香りも違うため、瓶に入れる香料を間違わずに慎重にスポイトを使って調整します。よく使う鍵盤に連動した瓶の香料は蒸発しやすいため、他の音よりも音程が崩れやすくなります。演奏中、音痴な音があったらほほ笑ましく鑑賞してくださいね。(酒田市美術館・学芸主任 武内治子)

=(3月24日付西日本新聞朝刊に掲載)=

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つくる展-TASKOファクトリーのひらめきをかたちに 
北九州市八幡東区の市科学館「スペースLABO」で5月14日まで開催中。西日本新聞社など主催。4月11、18、25日と5月9日は休館。中学生以上1100円、4歳~小学生600円。事務局=070(4035)2698(平日午前9時~午後5時)。

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