生誕100年 いわさきちひろ、絵描きです。
2019/04/20(土) 〜 2019/05/26(日)
10:00 〜 20:00
福岡アジア美術館
2019/04/28 |
子どもを題材にした水彩画やパステル画などで多くの人に親しまれ続ける画家いわさきちひろ(1918-74)の展覧会「生誕100年 いわさきちひろ、絵描きです。」が20日から、福岡市の福岡アジア美術館で開かれる。展覧会の狙いや展示内容を紹介するため、東京都練馬区下石神井のちひろ美術館・東京を訪ねた。
(大西直人、展示画像はちひろ美術館提供)
同美術館は、ちひろがかつて暮らした自宅跡に建つ。77年に開館。アトリエも忠実に復元している。ちひろの両親が戦後に開拓農民として移住した長野県松川村には97年、安曇野ちひろ美術館も開館。両館で世界34カ国・地域の作家207人の絵本や原画など2万7200点を収蔵する。
今回はちひろの作品だけでなく、自画像や制作中の写真、影響を受けた画家の作品など計200点を展示。生きた時代、出会った人、磨いた絵画技術を総合的に紹介する。昨年の東京と京都、そして福岡と全国3カ所だけの巡回展となる。
表題は、ちひろが後に夫となる松本善明氏(元衆院議員)に49年、初めて自己紹介した際の言葉。主任学芸員の上島史子さんは「童画家や挿絵画家は一段低い画家とみられていたが、ちひろは自分が絵描きであり、絵本を芸術として位置づけたいと考えた」とみる。
淡い色使いもあり「かわいい」「やさしい」「やわらかい」の印象が先行するちひろ。しかしアンデルセンの「絵のない絵本」や戦争が題材の絵本は、鉛筆や墨の鋭角な筆致が目立つ。
63年から74年の絶筆まで描いた月刊誌「子どものしあわせ」(草土文化)の表紙絵は実験の場ともいえた。「あごに手をおく少女」はあごの輪郭線などを大胆に省略。同時期の「枯れ葉のなかの少年」は体を白抜きした。
実験的な描法は「絵本でなければできないこと」を目指して、68年から73年まで計6冊を制作した至光社の絵本シリーズで進化した。「ぽちのきたうみ」の「海の夕焼けと手紙をかく少女」は太い筆の大胆な運びに勢いを感じさせる。
「となりにきたこ」の「引っ越しのトラックを見つめる少女」は、完成原画に加えて練習の「習作」も展示する。同じ題材を同じ構図で描いても画材や線が変わると印象も一変。落書きの図を変えるなど壁を目立たせる工夫も興味深い。
「となりにきたこ」に添えて、ちひろは「私は豹変(ひょうへん)しながらいろいろとあくせくします。よい方に豹変したならいいけれど、新しいことというのはいつも不安です」と書いた。
ちひろが豹変し続けられたのも「女学校時代に佐賀県出身の洋画家、岡田三郎助から指導されたデッサンの基礎があったからこそ」と上島さんは指摘する。
岡田をはじめ多くの人たちと出会い、戦争や戦後の激動を生き、技術を広げたちひろ。今回の展覧会について、長男で美術・絵本評論家の松本猛さんは「ちひろが描いた絵の背景にある時代とともに、デッサンで鍛えた線の美しさに注目してほしい」と話している。
=4月19日 西日本新聞朝刊に掲載=
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