江口寿史展
EGUCHI in ASIA
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福岡アジア美術館
アルトネ編集部 2019/05/13 |
九州国立博物館で開催中の「京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」は、鎌倉彫刻の名宝が展示される、非常に貴重な展覧会。だけど、ただ鑑賞するだけではもったいない。そこで、福岡でひそかに活躍する謎の仏像学芸員Xが、独自の視点で「鑑賞のツボ」を紹介するのが本コラム。それではミスターX、よろしくお願いします(編集部)。
私は仏像学芸員X。現役だから目の前にやらなきゃいけない仕事は山ほどあるが、よそ様の展示を見ておくのも仕事のうち、ということで、九州国立博物館で開催中の「京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」展に行ってきた。展示を見て感じたことをレポートする。
地味に凄い!大報恩寺
大報恩寺は京都市上京区にある寺で、千本通りにあることから「千本釈迦堂」の名で知られている。今から約800年前の承久2年(1220)に義空上人(1171~1241)が開いたという。
義空は出羽国(今の秋田・山形県)出身で、比叡山延暦寺で天台宗を学び、祖父はあの源義経(牛若丸)を援助した奥州藤原氏の三代目・藤原秀衡だったらしい。繁栄を誇った一族の没落を目撃し、世の中の無常を肌で感じて育った人物だったのかもしれない。
大報恩寺と聞いてピンとくる人はあまりいないだろう。しかし、鎌倉時代前期の安貞元年(1227)に建てられた本堂は、京都の市街地の中では現存最古の木造建築で、その貴重さから国宝に指定されている。千年の都・京都には古い建築がたくさんありそうな気がするが、応仁の乱など幾多の戦争や災害によって案外残っていないのだ。
今回はその本堂に伝えられた貴重な仏像がすべて公開される。中でも天才仏師運慶とともに活躍した快慶とその弟子たちが造った「十大弟子立像」、運慶・快慶の次世代にあたる実力派仏師定慶(じょうけい)が造った「六観音菩薩像」は最大の見どころと言えそうだ。
では見せてもらおうか、その慶派の実力とやらを・・
キュートな平安仏
会場に入ってまず意表を突かれた。鎌倉彫刻の殿堂というイメージが先行していたせいか、いきなり10世紀の「千手観音立像」(№17)が展示されていたからだ。
大報恩寺の創建より約300年も古い像がなぜ?と思うかもしれないが、廃絶した寺から仏像などが移されて残っていることは実はよくあることだ。さすがは京都だと言っておこう。
重厚な一木造りの像だが、きゅっと腰が引き締まったプロポーション、目が細く切れ長なお顔がなかなか魅力的だ。天衣が肩から腕にぐるっと巻き込まれているのもキュート。
歩くお地蔵さま
次に登場したのは鎌倉時代の「地蔵菩薩立像」(№8)。北野天満宮の近くにあった願成就寺経王堂から移されたもので、がっしりとした体つきが頼もしい。地蔵菩薩は地獄に落ちた人々を助けてくださる仏さま。心にやましい所がある人は今のうちに拝んでおくべし。
ところで、この像の左足に注目してほしい。親指を少し反らしているのがわかるだろうか。これは決してお地蔵さまがリズムをとっているわけではなく、人が歩く際の足の動きを仏像に応用したものだ。
もちろん現代の私たちは歩く時にいちいちそんな足の動きはしない。しかし能や古武道では今でもこうした足の動きをする。つまりお地蔵様が生きていて衆生を救済するために歩を進める姿を表現しているのだ。
十大弟子登場
展示前半の最大の見どころは、快慶一門が造った「十大弟子立像」(№2)だろう。
十大弟子というのはお釈迦さまの弟子たちのうち最も偉大な十人で、いわばお坊さんの元祖みたいな人々。彼らはみんなお釈迦さまが在世中の人々だが、年齢も出身地も社会的な身分(バラモンとか王族とか商人とか)も異なり、それぞれ智慧第一、説法第一、多聞第一というように得意分野を持っていたらしい。自分でナンバーワンを主張したかどうかは知らないが、みんな相当濃いキャラクターだったに違いない。
だからその像を造るとなると各人のキャラクターがはっきりと分かるようにしなければならない。ちゃんと「キャラ分け」ができているか、そこが鑑賞のポイントだ。
(次回に続く)
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