狩野芳崖、継がれる想い

　近代日本美術の胎動期に活躍した狩野芳崖（1828-1888）が、最期に手掛けた作品《悲母観音》(1888年、東京藝術大学蔵、重要文化財）。本展覧会では、この悲母観音からはじまる物語を紡いでいきます。

　物語のはじめに、狩野芳崖の最初期の作品から晩年の作品までを展観します。第1篇では《悲母観音》を起点とした物語―山田敬中や菱田春草にみる東京美術学校での制作作品、そして芳崖四天王に数えられる岡倉秋水と高屋肖哲の悲母観音研究や狩野芳崖作品の模写などをご紹介します。第2篇では、もうひとつの代表作《仁王捉鬼図》や芳崖晩年の仏教画題作品とともに、現代美術の中に息づく芳崖もご覧いただきます。

　芳崖の模倣作やそこからインスピレーションを受けた作品たちを通して、改めて芳崖の近現代美術への影響について考えます。