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白隠と仙厓に見る、大和の禅【レポート】

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浅野 佳子
2018/01/29
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九州国立博物館にて、芥川賞作家で臨済宗の僧侶でもある、玄侑宗久さんの講演会が行われました。これは、現在同館の文化交流展示室で開催中の「白隠さんと仙厓さん」展にちなんだもの。この貴重な機会に、なんと定員の2倍近くの応募があり、抽選で選ばれた人たちが駆けつけました。お話のテーマは、「白隠と仙厓に見る、大和の禅」。白隠さんと仙厓さんが、どんなお坊さんだったのか?二人がどのように禅を捉えていたのか?に焦点を当てて語られました。

 

お坊ちゃんだった白隠さん

「並べて語られることの多い二人ですが、私にはずいぶん違うように思われるんですね」と、玄侑さんのお話は、それぞれの生い立ちから始まりました。

白隠さんは江戸時代中期に、駿河国の問屋(今で言う物流の元締)という裕福な家に生まれます。幼い頃に地獄の話を聞き、恐怖に取り憑かれて出家。「慧鶴(えかく)」という名前を与えられます。

玄侑さんは、この名前に注目します。「鶴というのは、道教のシンボルなのです。鶴と亀と言いますが、この2つは全く異なるものが対等だということ。道教は、考え方や生き方が違っていても、仲良くできると考えます」。

にも拘わらず、慧鶴である白隠さんは、病気になるまで儒教的な生き方を続けます。「努力の人で、自己修練的。スキルアップを是として、厳しい修行を行いました」。

 

貧しい生まれだった仙厓さん

一方の仙厓さんは、美濃国の貧しい農家に生まれ、11歳で出家。そしてこちらも白隠さんと違わず、厳しい修行に明け暮れます。あのユーモラスでおおらかな画から想像ができないくらい、強い我を持った人物だったと、玄侑さんは説明します。

「私はそれを、自らの出自に対するコンプレックスだったのではないかな?と考えています。修行後に兄弟子には次々とお寺が決まり、自分はなかなか決まらなかった時に、自棄を起こして、本や硯を燃やしたり、土まんじゅうを師匠の庵に投げつけたり、道場を出て横穴の中で一人暮らしを始めたりしています」。

 

禅の中に、道教も儒教も取り込んでいく

しかしその後、白隠さんは「生まれも頭もよく、おそらく傲慢だったのでは?」と玄侑さんは想像しますが、自分は大きな悟りを得たと確信したにも関わらず、師匠にそれを否定されます。さらに考えすぎるあまり、病にかかります。

そうした経験を経て、白隠さんの教えは懐の深いものになっていきました。それを玄侑さんは「儒教も道教も合体させ、それすら“禅”と言っています」と表現。「もともと道教は、儒教へのアンチとして発展したものですが、対立する二つの考え方が白隠さんの中で大和として融合されていくんですね」。

同様に仙厓さんも、天明の大飢饉に見舞われた東北行脚などを経て、巨大な自我は大きな菩提心に変わっていたのではないかと推理します。仙厓さんは身分問わずいろいろな人と親しくつきあいます。博多の聖福寺の住職としてやってきた後も、禅僧の最高位を表す紫衣を受け取ることを、3度も断っています。驕らず、高ぶらない、私たちがイメージする仙厓さんの姿が見えてきます。

 

禅とアート

僧侶で禅画をよくした、白隠さんと仙厓さん。一方で僧侶でありつつ小説を書き続ける玄侑さん。両者に共通点はあるのでしょうか?

「『遊ぶ』という点は共通しているかもしれませんね。例えば子どもが砂遊びをしている時に、『これだとたくさん砂を運べるよ』とブルドーザーを持ち出すのは無粋でしょう? 目的意識や効率から解放され、目の前のことに没頭するという点では、私もお二人と同様に創作を通して遊んでいます」。

一方で少し違う点もあるようです。「二人はだれかの求めに応じて描いていますね。あの画たちは、衆生済度のひとつなのです」。それに対して、玄侑さんは自らの執筆のことを「生産」という言葉で表現します。「誰かの救いになることも、むろん考えますが、それよりも自分自身が生産の場にいたい、という欲求が強いかもしれません。生産というのは理解しにくい表現かもしれませんが、私にとって小説や読経は生産、エッセイの執筆は消費に思えるんです。講演は消費と生産が半々でしょうか。不思議ですね」。


いま九州国立博物館で見ることができる、二人の禅僧の画。なぜ2人がそのような画を描くに至ったのかを知ることができる、実りの多い講演会でした。講演終了後、玄侑さんは著書へのサイン会を行いました。一人ひとりに違う言葉を選んで書き付けその意味を伝える玄侑さんと、一言も聞き漏らすまいと熱心に耳を傾ける人々の姿に、白隠さんと仙厓さんが画を描いていたのも、こういうことなのかな?と少し分かったような気がしました。

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