江口寿史展
EGUCHI in ASIA
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福岡アジア美術館
2020/07/04 |
ARTNEでは、2020年5月21日に他界された福岡市の画家、菊畑茂久馬さんを追悼し、過去、菊畑さんが西日本新聞で執筆した書評やコラムを連載します。
【第8回】山本作兵衛さんのこと
暮れも押しつまって冷たい木枯しが吹く頃(ころ)になると、きまって山本作兵衛さんのことが思い出される。葬儀の日が一九八四年十二月十九日、雪のちらつく寒い日だったからだ。いつの間にか、あれからもう二十三年の歳月が流れた。
小さなお寺のお堂に入りきれない人たち百人ほどは、凍えるような寒い寺の庭に、身を寄せ合うように立ったまま葬儀に参列した。ふと気がつくと、私の前に小学生が数人、身じろぎもせず最後まで直立したままでいた。作兵衛さんの人柄が偲(しの)ばれる光景であった。
十四歳から坑内で働いた生粋の炭鉱夫だった作兵衛さんは、ご自分の体験をもとに筑豊炭坑の記録を絵に描き残した画家として知られている。六十歳半ばを越えて、はじめて絵筆を握った絵は九十二歳で亡くなるまで一千枚を超えた。その画集は「山本作兵衛・筑豊炭坑絵巻」(葦書房)などで紹介されている。郷土が誇る民衆絵画の金字塔である。
作兵衛さんの堂々たる老年の生き方は、老いた者たちに大きな希望と勇気を与えてくれる。私も老人真只中、みなさんご一緒に元気を出して、明るく新しい年を迎えましょう。 (画家・菊畑茂久馬)
▼きくはた・もくま 画家。1935年、長崎市生まれ。57年-62年、前衛美術家集団「九州派」に参加。主要作品に「奴隷系図」「ルーレット」「天動説」の各シリーズ。97年に西日本文化賞、2004年に円空賞をそれぞれ受賞。「絵かきが語る近代美術」など著作も多い。2020年5月に他界。
=2007年12月16日西日本新聞朝刊に掲載=
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