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【連載】山出淳也 アート、まちに出る 7

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山出淳也
2020/12/22
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僕が思う豊かな地域とは(前)​

 「BEPPU PROJECT」というNPOの代表をしている。すでに15年がたち、職員も20人を超えた。アートに関する企画や観光推進など、行政側の素案作りから関わることも多い。また商品の企画やデザイン、企業のブランディングまで幅広く地域が豊かになるためのお手伝いをさせていただいている。

 豊かさの定義は難しい。

 かつては雑誌で見た憧れの生活を手に入れたいと、誰もが夢見ていた時代もあった。だけど今は一人一人、価値観が異なる時代。欲しいものなんて気が付いたら無くなった。DIYという言葉が一般に普及し、自分たちが求める価値を自ら創出することも当たり前になってきた。

 建築家の青木淳さんがこんな風に語っている。

 遊園地は、人がどうすれば楽しくなるかが設計の出発点であり、そのために徹底的にシミュレーションを行う。原っぱは対局の関係にある。当然シミュレーションなんてしていない。自分が子どもの頃の原っぱといえば、土管が転がっていて、所々に草が生えているような場所。何かを作るために一度整備をされたが、当初の目的が消えつつある放置された状態。遊園地はルールの中で遊ぶが、原っぱは自分たちでその場の楽しみ方を生み出さなければならない―と。

 ドラえもんに出てくる原っぱみたいに、時には土管は隠れる場所に、時にはガキ大将のリサイタル・ステージに変わる。つまり、関わる人々によって変化し続ける有機的な場所。それは、いろいろな活動が誘発される町との「関わり代(しろ)」と言える。

 2007年に別府市の中心市街地活性化を目的にシンポジウムを企画した。文化によって地域を再生する「創造都市」という概念を打ち出した都市プランナーのチャールズ・ランドリーさんもお招きした。彼は、創造的都市について「社会に関わること、環境に関わること、そして行政に関わること、全ての分野において、皆さんが創造性を発揮できる街のことだ」と教えてくれた。

 僕が思う豊かな地域とは、可能性が排除されない場所のこと。町には「原っぱ」が必要だ。(やまいで・じゅんや=アーティスト、アートNPO代表。挿絵は鈴木ヒラクさん)

=(11月11日付西日本新聞朝刊に掲載)=

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