九州、山口エリアの展覧会情報&
アートカルチャーWEBマガジン

ARTNE ›  FEATURE ›  連載記事 ›  西方に極楽あり24 とりあえず回るやつお願いします【連載】

西方に極楽あり24 とりあえず回るやつお願いします【連載】

Thumb micro 2cf83d8d0a
末吉武史
2018/11/01
LINE はてなブックマーク facebook Twitter

とりあえず回るやつお願いします

 

浄土九州展では会場入口に奇妙なアイキャッチを設置しています。
西光寺の五趣生死輪図(ごしゅしょうじりんず)を立体化したもので、人が死んだあと5つの世界(天道・人道・畜生道・餓鬼道・地獄道)に生まれ変わるとする仏教の考え方、輪廻(りんね)をあらわしています。

たぶん日本初、自分で回せる五趣生死輪図


今回は、その輪廻を体験してもらおうと、無常大鬼(むじょうだいき)が持つ生死輪(しょうじりん)をお客さん自身に回してもらうことにしました。輪の下にはさりげなく赤い矢印が付いていて、自身の来世が占えるという趣向です。
「縁起でもない・・」と眉をひそめる向きもあるかと少し心配したのですが、皆さん案外明るく楽しんでいただいているようで、ギャラリートークでも「年末ジャンボ宝くじ!」とか言って笑いをとれるので重宝しています。
施工した某社長によれば新幹線で使うような高級ベアリング軸を仕込んだそうで、それはもう滑らかに回ってなかなか止まらないのが難点ですが(笑)、高速で回転する生死輪だけをじっと見つめたあと不意に視線を鬼の顔に向けると、こんなぐあいに鬼の顔がぐにゃりと歪む目の錯覚も楽しめます。

シュールな目の錯覚も味わえます

ところで、ギャラリートークで「自分が死んだらどうなると思いますか?」とお客さんに質問してみると、意外にも「生まれ変わる」より「すべて消えてなくなる」と答える方が多いようです。例えるなら台風がそのうち温帯低気圧になって雲散霧消するようなイメージでしょうか。
輪廻は「人が死んだらどうなるの?」という問いに対する仏教側のひとつの答えですが、日本人の死生観も昔と今ではずいぶん変わってきているのを感じます(お坊さんも大変でしょう)。
ただ、思想信条的にはいろいろあっても人はいつか必ず死んでしまうのだし、いざというときに焦らないよう心の準備をしておくに越したことはないと思います。死から目を背けている人は夏休みに宿題を最後までほったらかして遊ぶ子どものようなものかもしれません。
浄土九州展もあと1週間を残すのみとなりました。まだご覧になっていない方は、とりあえず生死輪をぐるぐる回して「人生の宿題」について考えてみてはいかがでしょうか。

 

=2018年10月29日福岡市博物館ブログに掲載=

 

おすすめイベント

RECOMMENDED EVENT
Thumb mini d310dce867
終了間近

もしも… 大辻清司の写真と言葉

2024/06/08(土) 〜 2024/07/28(日)
九州産業大学美術館

Thumb mini 394d2ffd6c
終了間近

軽さ・明るさ  Lightness/ Lightness Kanae Ohgi Exhibition
オーギカナエ 個展

2024/07/13(土) 〜 2024/07/28(日)
EUREKA エウレカ

Thumb mini 8505535df2
終了間近

ゆうまち芸術祭 アーティスト・イン・レジデンス プレ事業
ゆうまちアートプロジェクトVol.1 山本愛子 Symbiosis - 回遊する色-

2024/04/27(土) 〜 2024/07/29(月)
iroherb

Thumb mini 8aaeb4a2b5

佐賀新聞創刊140周年記念
立体切り絵SouMaの世界展

2024/07/04(木) 〜 2024/08/04(日)
佐賀県立美術館

Thumb mini 20608978b3

夏休みこども美術館2024
未来にむかって歩くなら?  ”わたしのくつ”をつくってみよう

2024/07/28(日) 〜 2024/08/04(日)
福岡市美術館 1階 アートスタジオ

他の展覧会・イベントを見る

おすすめ記事

RECOMMENDED ARTICLE
Thumb mini 86df2d5b57
ニュース

笑い飯哲夫のおもしろ仏教講座 福岡市博物館で開催決定!

Thumb mini 5df594b110
レポート

天か地獄か、死者は10人の王に裁かれる -エンマと地蔵菩薩-【レポート】

Noimage
連載記事

遮られる世界 パンデミックとアート 椹木野衣<84> 【連載】開かれる世界 異常事態の渦中で 取り戻される日常

Thumb mini ba3135c76e
連載記事

遮られる世界 パンデミックとアート 椹木野衣<83> 【連載】コロナ禍の変化 国内の文化資源だけで 示唆に富んだ企画展も

Noimage
連載記事

遮られる世界 パンデミックとアート 椹木野衣<82> 【連載】ポスト・コロナの行方 深層には恐れや執着  「夢」の推移に注目を

特集記事をもっと見る