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追悼人間国宝中島宏展によせて 元名護屋城博物館長 東中川 忠美さん 古武雄再評価に尽力―連載【コラム】

2019/05/06 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

中島宏先生が生涯を送った武雄市弓野は古い窯業地で、水甕や鉢などが生産されていました。先生は幼い頃から父の茂人さんが集めた古陶磁を見て目を養い、30代でコレクションを受け継いで、後に「古武雄(こだけお)」と名付けた製品の収集を本格的に始めました。

元名護屋城博物館長 東中川忠美さん


古武雄はかつて古唐津の一系統の雑器とされ、民芸と言われた時期もありました。比較的大型で、磁器にはないダイナミックなものが多い。筆の運びやろくろ目にスピード感と生命力があり、刹那的で多彩で、そして自由です。先生は「古唐津なんかにゃ負けやせん」「古唐津、何するものぞ」と息巻いていました。
先生は私が県教委で窯跡発掘をしていた20代のころ、現場に必ず来ていました。作家目線で「おまえ、そげんことも知らんとか」と言いつつ、陶片を解説してくれたものです。
先生の古武雄コレクションは約600点にのぼり、2002年に東京の根津美術館で紹介され、注目を集めました。私は06年から収集品を整理し、後に先生が著書「発見 江戸のモダニズム」にまとめました。
発掘も進み、古武雄は決して雑器に限定されないことが分かってきました。茶陶にも使われ、江戸の大名屋敷跡や島原の原城跡などからも出土しているのです。先生は亡くなる数カ月前にコレクションを九州陶磁文化館に寄贈されました。
先生は芸術家であり、哲学者でもありました。40年間お付き合いしましたが、ずっとぶれなかった。今展に合わせ先生の銘の研究も進め、染付(そめつけ)から印鑑、線彫りへの変遷と、青磁作家としての飛躍の関連が明らかになりました。

≪展示紹介≫鉄絵松樹文甕(18世紀後半、九州陶磁文化館中島宏コレクション)
中島さんが生まれ育った弓野で江戸期に作られた。
簡略化された松絵に生気がみなぎっている。


古武雄は一見、先生の青磁とは対極の世界でしたが、先生はその自由で無心の境地に学び、先人陶工の仕事に敬意と憧れを持ち続けていました。(談、聞き手は平原奈央子)=おわり

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