江口寿史展
EGUCHI in ASIA
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福岡アジア美術館
2020/08/19 |
国内で流行した感染症の歴史や暮らしへの影響、人々の祈りのかたち、疫病をはらう伝統芸能などを取り上げた特設展「やまいとくらし~今みておきたいモノたち~」が、福岡市早良区の市博物館で開かれている。展示は前中後期に分かれ、8月末までの前期は、江戸後期から大正期にかけて多くの死者を出した天然痘、コレラ、スペイン風邪に関する博物館の収蔵資料など9点を展示。新型コロナウイルスが猛威を振るう中で「先人たちが感染症を乗り越えてきた歴史を知ってほしい」と担当者は話す。
天然痘、コレラ 絵画や資料展示
■天然痘
強い感染力を持つ天然痘は、江戸期の博多祇園山笠にも影を落とした。人形師が1789(寛政元)年に書き残した報告書「博多祇園山笠番付」の展示品は、川端町など五つの町が天然痘の終息を願って「疱瘡(ほうそう)山」を奉納したと記している。また、福岡藩11代藩主の黒田長溥(ながひろ)が、天然痘の流行を抑えるため庶民に予防接種を行ったと記した商人の日記(1849年)もある。天然痘は1980年、WHO(世界保健機関)によって「地球上からの根絶」が宣言された。
■コレラ
明治期のコレラの様子を伝えるのは、博多生まれの日本画家、祝部(ほうり)至善(1882~1974)が描いた、コレラ患者を担架で運ぶ絵だ。木の棒でかつぐ三角柱の担架は感染を防ぐためか布で覆われ、コレラ患者を示す黄色い旗が立てられている。ちょうちんを手に先導する2人は、警察官と福岡市職員。致死率も高かったコレラだけに、絵には「子供は近寄っちゃいかん」との言葉が添えられ、登場人物の表情からは不安と緊張感がうかがえる。
■スペイン風邪
インフルエンザにあたるスペイン風邪は、およそ100年前の大正期に流行した。西日本新聞の前身である福岡日日新聞は1918(大正7)年11月4日の紙面で「魔風の如(ごと)き流行感冒」「官衙(かんが)学校会社半休の有様(ありさま)」の見出しで報じている。スペイン風邪は世界的な広がりを見せ、九州でも役所や学校、会社まで休みとなった状況はコロナ禍の今に通じる。
同博物館学芸員の野島義敬さんは「かつて魔病と恐れられた感染症を、先人は乗り越えてきた。今、世界を不安に陥れているコロナ禍もいつか終息するはず。勇気を奮い起こす一助にと展示を決めた」と話した。(大淵龍生)
会期は11月29日まで。中期(9月1日から)と後期(10月20日から)は資料を入れ替えて展示する。入館料は一般200円、高・大生150円、中学生以下は無料。月曜休館。福岡市博物館=092(845)5011。
=8月9日付西日本新聞朝刊に掲載=
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