特別展
奈良 中宮寺の国宝
2021/01/26(火) 〜 2021/03/21(日)
09:30 〜 17:00
九州国立博物館
2021/03/03 |
九州国立博物館(太宰府市)で開催中の特別展「奈良 中宮寺の国宝」の見どころを同館の小泉惠英(よしひで)・学芸部長が5回にわたって解説します。
現代美術思わす痩身
日本を代表する半跏思惟(しゆい)像である中宮寺本尊。そもそも半跏思惟像とは何の像であろうか。文字の上では、足を組んで(半跏)考える(思惟)像、としか説明していない。日本古代の半跏思惟像の中では、大阪の野中寺(やちゅうじ)の像が唯一「弥勒(みろく)」の銘を持つのみである。今回の展覧会では、古代アジア各地の半跏思惟像が勢ぞろいしている。
この「菩薩(ぼさつ)半跏像」は、まるで現代美術のような極端な痩身(そうしん)と、ほほ笑みを浮かべながらも異様な迫力の表情が目に飛び込んでくる。類いまれな造形に加えて、特徴的なのは台座の形である。多くの半跏思惟像は、スツールのような丸椅子あるいは蓮華(れんげ)座に腰掛ける。だが、この像の台座は須弥座(しゅみざ)と呼ばれるもので、本来は菩薩ではなくて如来のための座である。
なぜ、如来の座に腰掛けるのか。それは、この菩薩が56億7千万年後に悟りを開き、如来になることを約束された弥勒菩薩だからではないか、と考えている。しかし、須弥座に腰掛ける半跏思惟像の現存例は少なく、他の形の台座の半跏思惟像への謎はやはり残る。
台座下端の銘文に、「丙寅(ひのえとら)」の年に「高屋大夫(たかやだいふ)」という人が妻の「阿麻古(あまこ)」のために作ったとある。丙寅が、西暦606年と666年のどちらに当たるか、いまだ決着していない。先述の大阪野中寺像も同じ「丙寅」とあり、こちらは666年説が認められている。
特別展では2体の像を並べて展示しているので、両者をじっくりと見比べて考えてみてはいかがだろう。(小泉惠英(よしひで)・九州国立博物館学芸部長)
=(2月28日付西日本新聞朝刊に掲載)=
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