九州、山口エリアの展覧会情報&
アートカルチャーWEBマガジン

ARTNE ›  FEATURE ›  コラム ›  特別展「奈良 中宮寺の国宝」珠玉の品 作品連載<3> 菩薩半跏像(重要文化財、7世紀、東京国立博物館)

特別展「奈良 中宮寺の国宝」珠玉の品 作品連載<3> 菩薩半跏像(重要文化財、7世紀、東京国立博物館)

2021/03/03 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

 九州国立博物館(太宰府市)で開催中の特別展「奈良 中宮寺の国宝」の見どころを同館の小泉惠英(よしひで)・学芸部長が5回にわたって解説します。

第1回目はこちら
第2回目はこちら


現代美術思わす痩身

「菩薩半跏像」(重要文化財、7世紀、東京国立博物館)

 日本を代表する半跏思惟(しゆい)像である中宮寺本尊。そもそも半跏思惟像とは何の像であろうか。文字の上では、足を組んで(半跏)考える(思惟)像、としか説明していない。日本古代の半跏思惟像の中では、大阪の野中寺(やちゅうじ)の像が唯一「弥勒(みろく)」の銘を持つのみである。今回の展覧会では、古代アジア各地の半跏思惟像が勢ぞろいしている。

 この「菩薩(ぼさつ)半跏像」は、まるで現代美術のような極端な痩身(そうしん)と、ほほ笑みを浮かべながらも異様な迫力の表情が目に飛び込んでくる。類いまれな造形に加えて、特徴的なのは台座の形である。多くの半跏思惟像は、スツールのような丸椅子あるいは蓮華(れんげ)座に腰掛ける。だが、この像の台座は須弥座(しゅみざ)と呼ばれるもので、本来は菩薩ではなくて如来のための座である。

 なぜ、如来の座に腰掛けるのか。それは、この菩薩が56億7千万年後に悟りを開き、如来になることを約束された弥勒菩薩だからではないか、と考えている。しかし、須弥座に腰掛ける半跏思惟像の現存例は少なく、他の形の台座の半跏思惟像への謎はやはり残る。

 台座下端の銘文に、「丙寅(ひのえとら)」の年に「高屋大夫(たかやだいふ)」という人が妻の「阿麻古(あまこ)」のために作ったとある。丙寅が、西暦606年と666年のどちらに当たるか、いまだ決着していない。先述の大阪野中寺像も同じ「丙寅」とあり、こちらは666年説が認められている。

 特別展では2体の像を並べて展示しているので、両者をじっくりと見比べて考えてみてはいかがだろう。(小泉惠英(よしひで)・九州国立博物館学芸部長)

=(2月28日付西日本新聞朝刊に掲載)=

おすすめイベント

RECOMMENDED EVENT
Thumb mini 0f54d98ee9
終了間近

特別展「生誕270年 長沢芦雪―若冲、応挙につづく天才画家―」

2024/02/06(火) 〜 2024/03/31(日)
九州国立博物館

Thumb mini 4db0098497
終了間近

『きみがいるから』原画展

2024/03/09(土) 〜 2024/03/31(日)
合同会社書肆吾輩堂

Thumb mini 06e57164b2
終了間近

『その怪文書を読みましたか』展

2024/03/16(土) 〜 2024/03/31(日)
hmv museum 博多

Thumb mini 1ac0126173

マルタ伝統工芸
ガヌテルアート展
ししゅう糸とワイヤーで作るマルタの花を楽しもう!

2024/03/25(月) 〜 2024/03/31(日)
アクロス福岡2F メッセージホワイエ

Thumb mini 662a82ff3e

朝日焼十六世 松林豊斎 茶陶展

2024/03/27(水) 〜 2024/04/01(月)
福岡三越4階「岩田屋三越美術画廊」

他の展覧会・イベントを見る

おすすめ記事

RECOMMENDED ARTICLE
Thumb mini ed689a5ccd
コラム

特別展「奈良 中宮寺の国宝」珠玉の品 作品連載<2> 文殊菩薩立像(重要文化財、鎌倉時代、中宮寺) 

Thumb mini 3221eea608
コラム

特別展「奈良 中宮寺の国宝」珠玉の品 作品連載<1> 間人皇后像(江戸時代、中宮寺) 

Thumb mini be5217cc92
コラム

思惟の姿 中宮寺の国宝<下>ほほ笑み

Thumb mini 78698618f6
レポート

九州初公開「菩薩半跏思惟像」が360度全方位から鑑賞できる! 九州国立博物館で特別展「奈良 中宮寺の国宝」が開催中【レポート】

Thumb mini df94a4ddd4
コラム

思惟の姿 中宮寺の国宝<上>影と光 

特集記事をもっと見る