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特別展「奈良 中宮寺の国宝」珠玉の品 作品連載<5> 菩薩半跏思惟像(国宝、7世紀、中宮寺)

2021/03/05 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

 九州国立博物館(太宰府市)で開催中の特別展「奈良 中宮寺の国宝」の見どころを同館の小泉惠英(よしひで)・学芸部長が5回にわたって解説します。

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工夫した光の扱い方

「菩薩半跏思惟像」(国宝、7世紀、中宮寺)

 最終回は舞台裏の話を少し。中宮寺本尊「菩薩半跏思惟像」は神秘的な美しさが賛美される一方で、私たち博物館の担当者にとって展示に頭を悩ませる像でもある。

 最適な空間をつくるには、温湿度など作品保全のための整備はもとより、壁や台の色、高さなど、さまざまな検討を加えていく。最後の決め手は照明である。この像の場合、美しさを際立たせている漆黒の姿ゆえに、一般的な上からの照明では前頭部から額までが煌々(こうこう)と輝き、一方で肝心の顔は全く表情が失われてしまう。

 この問題をどう解決するか。ヒントは二つ。本展でも紹介している写真家たちの捉えた姿を通して彼らの光の扱い方を読み解くこと、もう一つは日野西光尊御門跡の次の一言であった。

 「本堂で毎日のお勤めのときに見上げるお姿が一番美しい」

 本堂では、正面から外光が入り、像に温かみのある表情を与えている。展示の主光源は、像の前方に大きな面を作ればよい。展示デザイナーはもう一歩踏み込んで、正面から両側まで包み込むように大きな面を作る案を示してきた。

 巨大な面光源に取り囲まれることでどのような効果が生まれるか。観覧者が像の周りを巡ると、その光はどう作用するのか。お寺の許しを得て本堂に照明器具を持ち込んで実験し、主光源の設計が定まった。大量の照明器具の調達には企業の協力もいただいた。

 しかし、展示室ではどうかこの話は忘れて、無心にご本尊と向き合い、それぞれに何かを感じていただければ幸いです。(小泉惠英(よしひで)・九州国立博物館学芸部長)

=(3月2日付西日本新聞朝刊に掲載)=

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