西日本新聞創刊140周年記念特別展
新・桃山展-大航海時代の日本美術
2017/10/14(土) 〜 2017/11/26(日)
09:30 〜 17:00
九州国立博物館
浅野 佳子 2017/10/10 |
「日本人が最もスキ」だと言われる、絢爛豪華たる桃山美術。そして「日本で一番人気の国宝」だと言われる長谷川等伯の《松林図屏風》。これらと邂逅できる「新・桃山展-大航海時代の日本美術」を楽しみにしている人も多いのでは? 関連展示が、すでに九州国立博物館で始まっています。その名も「<新・桃山展>の仲間たち」。九州国立博物館が所蔵する作品、または寄託されている名品の中から、特別展と関連性の高い作品をピックアップ。どうしてどうして、これもかなりスゴイ! 九州国立博物館主任研究員の鷲頭桂さんに案内してもらいました。
●スーパースター狩野永徳が描いた「黒と白」「動と静」(4階9室)
安土桃山〜江戸時代にかけて、お寺や城の障壁画などをてがけた絵師集団「狩野派」。その中でもずば抜けて、ダイナミックで勇壮な絵を描くことで知られた狩野永徳が、その実力をいかんなく発揮した《松に叭叭鳥・柳に白鷺図屏風》。ひと目で、右隻と左隻の鮮やかな対比に目が行きます。
右隻…動のパート。まるで動物のような躍動感がある松の根本には、水しぶきをあげて滝が流れ込む。真っ黒な叭叭鳥が、画面にアクセントを加える。季節は春と夏。
左隻…静のパート。葉を落とし、生命力をいったん潜ませた柳の木。風景は左にゆきにつれて雪景となり、静けさをたたえる。白鷺が佇む。季節は秋から冬。
「このドラマチックな演出を実現させているのは、間違いなく永徳の画の力です。サッと走らせた筆で、躍動感あるいきものたちを描き出す技量は秀逸です。
さらに、特別展が始まると、この永徳の屏風の向かいに、長谷川等伯の《松林図屏風》の実寸大の高精細複製品が展示されます。この複製画は撮影もできますし、1mの距離から筆跡に目を凝らすこともできます。この2人の巨匠が並び立つ展示を、お楽しみに!」(鷲頭さん)
●だれが描いたの? 日本とヨーロッパが混ざった、不思議な屏風(4階11室)
続いても、屏風。でもずいぶん趣が違います。
「実はこれ、マカオで作られたものと言われています。当時マカオは、ポルトガルの植民地でした。大航海時代は、多くの文物が行き来していて、日本の屏風も世界中で愛好されたことが分かっています。
これは、その日本の屏風を知っている人が描いたものと思われます。ポルトガル語でこのようなものを『ビオンボ』と呼ぶのですが、この響き何かに似ていませんか? そう!『びょうぶ』に由来しているんです。
線を重ねて描いているところは、東洋的な特徴です。西洋の絵は、色を塗って面で描きますから。
ところでこの絵の中には、とても不思議なものがいるんですよ」(鷲頭さん)
あれ? これはドラゴン? それともグリフィン?
ややっ!? 鶴とキツネが、水差しと差し向かいになっている…。このシーンどこかで覚えが…。
やっぱり! イソップ物語の、キツネがコウノトリにスープを飲ませないように意地悪する話だ!平たいお皿に出して自分だけおいしそうにスープを飲んでいたキツネに、細長い水差しでごちそうを出してお返しする場面と同じ!
「そうなんです。孔雀や鳳凰、グリフィンにイソップ物語と、東洋と西洋のモチーフが渾然一体になっています。何でこれらを知って描いたんだろうと考えると、国境を超えたスケールの大きさを感じます」(鷲頭さん)
ここでは2点しかピックアップしませんでしたが、まだまだおもしろいものがたくさん! ぜひ足を運んで自分の目で探してみてください。最後に鷲頭さん、この安土桃山時代の美術の魅力って、どんなところにあるんですか?
「この時代は、日本美術の黄金期と言う人もいます。中国やヨーロッパの影響を大きく受けた絵も描かれますし、力強く豪華な絵がたくさん描かれた時代でもあります。
今回の特別展を『新・桃山展』と名付けたのは、美術史の観点だけでなく、政治史であえて時代を区切ってみようという試みの表れです。世界がドラスティックに変わった時代と、美術の影響を如実に感じることができる展示になったと思います。ぜひ歴史好きの人にも見ていただきたいです」(鷲頭さん)
特別展「新・桃山展」 2017年10月14日(土)〜11月26日(日)
関連展示《新・桃山展》の仲間たち 開催中〜2017年12月23日(土)※展示替えがあります。
※「新・桃山展」開催期間中は、「新・桃山展」チケットで
文化交流展もご覧いただけます。
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