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ふたつの旅 青木繁×坂本繁二郎 <5>   認め合った心の軌跡 久留米市美術館【コラム】

2022/12/20 LINE はてなブックマーク facebook Twitter
青木繁「朝日」(1910年、佐賀県立小城高校同窓会黄城会蔵、佐賀県立美術館寄託)

 

坂本繁二郎「幽光」(1969年、石橋財団アーティゾン美術館蔵)

 青木繁と坂本繁二郎が“旅”の最後にそれぞれ行き着いたのが、太陽と月。
 
 肺結核を患った青木は、照り映える空と海の色彩が美しい「朝日」を描いた。この海は北向きに開けた唐津湾(佐賀県)を描いたと伝わる。題名は朝日だが、最盛期に流動感のある海を描いてきた青木だけに、波穏やかな海に心を投影したように思える。天才は自らの死期を悟ったのか。静かな光に再起を懸けたのか。
 
 82歳から月を主題とした坂本が描き残したのは、雲の切れ間から、かすかな光がにじむ「幽光」。坂本は、おそらく最期を意識して雲で月を覆い、筆を置いたのだろう。最晩年はほぼ視力を失い、筆を持つ手は支えを要した。月に光を求め続けた巨匠は、幸せな画家人生を歩んだとの言葉を残し、天寿を全うした。
 
 対比される2人だが、ともに「じゅうげもん」だったのではないだろうか。筑後地区の方言で、ひねくれ者や頑固者をそう呼ぶ。
 
 文明開化で押し寄せた西洋風の波を、青木は巧みに乗りこなして神話世界の糧とした。坂本は渡仏で自らの歩みを推し量った。激変の時代に独自性を追い求めた根底には、認め合うからこそ意地でも模倣したくない好敵手があったからではと思えてならない。
 
 久留米市美術館の森山秀子副館長は「芸術で身を立てる人が少ない時代に『芸術家像』をつくり上げた」と2人の功績を語る。“旅”の軌跡は今を生きる私たちの心を動かし、新たな“旅”へといざない続ける。
(木村知寛が担当しました)
 =おわり

=(12月18日付西日本新聞朝刊に掲載)=

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生誕140年 ふたつの旅 青木繁×坂本繁二郎 来年1月22日まで、久留米市野中町の市美術館=0942(39)1131。西日本新聞社など主催。一般1000円、65歳以上700円、大学生500円。高校生以下無料。

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