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ふたつの旅 青木繁×坂本繁二郎 <2>   圧倒的な自負と才能 久留米市美術館【コラム】

2022/12/15 LINE はてなブックマーク facebook Twitter
青木繁「自画像」(1903年、石橋財団アーティゾン美術館蔵)
青木繁「わだつみのいろこの宮」(1907年、石橋財団アーティゾン美術館蔵)

 みずみずしい色彩で、水底を訪れた山幸彦と豊玉姫とが出会う日本神話の一場面を描いた縦1・8メートルの大作「わだつみのいろこの宮」(国重要文化財)。山幸彦を包むまぶしい光、頰を赤らめた豊玉姫の表情。画家としての将来をかけた青木繁が、24歳で東京勧業博覧会に出した一世一代の勝負作だ。

 坂本繁二郎より一足早く上京した青木は18歳で東京美術学校(現東京芸術大)に入学。古事記や日本書紀に神話のイメージを膨らませ、伎楽面や舞楽面に神々の面ざしを見いだした。42年ぶりにまとめて展示された仮面のスケッチ群には、対象に没入する青木の姿がうかがえる。

 21歳で神話画14点を世に出し、デビューした青木。画壇の頂点を目指す自らを古代ギリシャのアレキサンダー大王に重ね、自画像もさまざまに試した。久留米市美術館の森山秀子副館長は「自画像を頻繁に描く作家が、まだ多くはない時代。青木は先駆けていた」と解説する。

 自画像からひしひしと伝わる圧倒的な自負と才能は、「わだつみのいろこの宮」に余すところなく込められた。日本神話をモチーフにしながら、物語の象徴性を際立たせる西洋画の細密な技法。豊かなイメージを確かに描き出す力を示している。後に明治浪漫主義を代表する大作は、前評判も間違いなく高かった。

 だが審査結果は、三等賞のさらに末席。青木は雑誌で審査が不公正だと批判し、東京を去った。くしくも同じ三等賞の首席は坂本だった。

=(12月15日付西日本新聞朝刊に掲載)=

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生誕140年 ふたつの旅 青木繁×坂本繁二郎 来年1月22日まで、久留米市野中町の市美術館=0942(39)1131。西日本新聞社など主催。一般1000円、65歳以上700円、大学生500円。高校生以下無料。

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