The Flavour of Power
─紛争、政治、倫理、歴史を通して食をどう捉えるか?
2023/03/11(土) 〜 2023/06/25(日)
10:00 〜 19:00
山口情報芸術センター[YCAM]
2023/05/09 |
山口情報芸術センター[YCAM]では「食と倫理リサーチ・プロジェクト」の成果を発表する展覧会「The Flavour of Power(ザ・フレーバー・オブ・パワー)─紛争、政治、倫理、歴史を通して食をどう捉えるか?」(〜 2023年06月25日(日)まで)が開催中です。本展の企画担当者、キュレーターのレオナルド・バルトロメウス氏に同展についてご寄稿いただきました。
**************
一皿の料理を前にして、みなさんはどんなことを思い浮かべますか?見た目の美しさ?味?ヘルシーかどうか?もしくは、その奥にある、何か別のもの?
山口情報芸術センター[YCAM] が2021年から取り組む、「食と倫理リサーチ・プロジェクト」はまさに、こうした問いを探求するための研究開発プロジェクトです。
この「食と倫理リサーチ・プロジェクト」のなかで、YCAMはインドネシアのジョグジャカルタを拠点に活動するアーティストコレクティブ、バクダパン・フード・スタディ・グループとともに食と倫理の関係をめぐる議論を重ねてきました。この議論で重視したのは、「日々の食に対して前提を疑うこと」そして、「批評的な視点で食を捉え直すこと」です。
長きに亘る議論の第2章として開催するのが、食(主に米)、紛争、技術、歴史の交差点に焦点をあてた展覧会「The Flavour of Power─紛争、政治、倫理、歴史を通して食をどう捉えるか?」です。この展覧会では、政治や紛争といった「食」をめぐる歴史的な背景を紐解くことで、それらがどう、私たちの食に影響を与えているのかをアーティストの視点から尋ねていきます。
バクダパン・フード・スタディ・グループは、「食」と食のもつ多様な側面への関心をもつメンバーによって生まれたアーティストコレクティブです。「食」はお腹を満たすだけではなく、「食」との付き合い方を考えたり、人生を振り返る “きっかけ” となりうるというのが、バクダパンの考え方。
「スタディ・グループ」の名前の通り、彼らはリサーチを軸に、アート制作やワークショップ、ガーデニングなど日々の生活のなかでの実践に至るまで、多様なアウトプットを通じて、政治的な歴史や不正、農業紛争といった「食」のもつ隠れた背景に光を当てることを試みています。
今回の展覧会では、2つの作品を発表しました。そのうちのひとつをここでは紹介したいと思います。(ほかの作品はぜひ会場でお楽しみください!)「ハンガー・テイルズ」と呼ばれるボードゲームです。バクダパンは、ゲームデザイナーのパンドゥ・ワンディータと共同で、このゲームを開発しました。
ハンガーテイルズは、食糧危機、政治、社会の複雑さ理解するためにつくられたボードゲームです。食をめぐる、生産から流通までの食料生態系について学ぶためツールとして制作されました。プレイヤーは遊びながら、現実世界で起こりうる「食糧危機」を疑似体験することができます。プレイヤー、ひとり一人の行動が、ここでは生態系全体に影響を与える可能性があるのです。
まず、このゲームには、 「農家A」「農家B」「卸売業者」「市長」の4人のキャラクターが登場します。キャラクターにはそれぞれ、勝利条件が設けられています。例えば、農民Aは家族のためにお金を蓄える必要があったり、市長は自分以外のプレイヤーから票を集める必要があったり…。それぞれ異なる勝利条件が、各プレイヤーの戦略に影響を与えるのです。
ほかにもゲームの進行を妨害する、特有の影響力を持った4つの「イベント・カード」がゲームの世界を複雑に盛り立てます。このゲームの最大の危機が「食糧危機」です。食糧危機が起こると、すべてのプレイヤーの状況は不利になります。
このゲームの制作においてバクダパンは、プレイヤー間の「交渉」にも重きをおきました。融資や食料の販売、競合ライバルへの交渉がゲームの鍵を握ります。会場に設置したゲームブースでは、「ハンガー・テイルズ」の世界観を現したミュージックビデオも展示しています。魅惑的なビートに乗って、リラックスした雰囲気のなかでプレイを楽しんでください!
ルールの複雑さに最初は戸惑うかもしれません。でも、ゲームという気楽さや楽しさがあるからこそ、私たちは「食」と「政治問題」を考えてみることができるのかもしれません。現在、YCAMでは4月と5月の週末に、「ハンガー・テイルズ」のゲーム体験会を実施しています。ぜひ、私たちと一緒に食糧危機について遊び、勉強してみませんか?
(本展企画担当者/レオナルド・バルトロメウス(キュレーター))
2024/11/09(土) 〜 2025/01/12(日)
福岡アジア美術館
2025/01/21(火) 〜 2025/05/11(日)
九州国立博物館
2024/10/31(木) 〜 2024/11/25(月)
大丸福岡天神店 本館8階催場
2024/09/07(土) 〜 2024/11/24(日)
つなぎ美術館
2024/10/26(土) 〜 2024/12/01(日)
九州芸文館