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近代黒田家の家宝<下> 電力王の手に渡った名品 福岡市博物館【コラム】

2023/10/07 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

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重要文化財 清拙正澄墨蹟 鎌倉時代(福岡市美術館所蔵)

 「清拙正澄墨蹟(せいせつしょうちょうぼくせき)」は、中国・元から来日した禅僧、清拙正澄が書いた漢詩です。清拙は博多に上陸後、京・鎌倉に東行し、鎌倉幕府執権北条氏や後醍醐天皇の帰依を受けて、南禅寺や建長寺などの禅寺の住持を歴任しました。

 この漢詩は、清拙が博多の円覚寺の長老、元中(げんちゅう)に「秀山(しゅうざん)」という別称を与えた時に書いたもので、移り変わる山の景色を詠んでいます。円覚寺の宝でしたが、初代福岡藩主黒田長政の希望で江戸時代初期に黒田家の所蔵品となりました。明治時代には「第一家宝」とされています。

 昭和17(1942)年12月に入札会に出品され、松永安左エ門が入手しました。松永は壱岐(長崎県)出身で各種電力会社の経営に参画し、戦後は全国を9ブロックに分けた電力会社の設立を推進して「電力王」や「電力の鬼」と呼ばれました。「耳庵」と号す茶人でもあった松永は、この漢詩を手に入れるとすぐに自身の催す茶会に用いています。「清拙正澄墨蹟」は10月11日から展示します。
                     (福岡市博物館学芸員・野島義敬)

      ◇     ◇

 福岡市早良区の市博物館で特別展「黒田侯爵家の名品」が11月5日まで開催中。
   
=(10月6日付西日本新聞朝刊に掲載)=

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