芥川龍之介と美の世界 二人の先達─夏目漱石、菅虎雄
2023/10/28(土) 〜 2024/01/28(日)
10:00 〜 17:00
久留米市美術館
2023/12/20 |
3点の書がある。夏目漱石が小説「吾輩は猫である」を執筆した書斎に後年、家主である旧友が掲げた扁額(へんがく)「我猫庵(がびょうあん)」。芥川龍之介が自らの書斎に名付け、掲げた「我鬼窟(がきくつ)」。そして、こちらは見覚えがあるだろう。芥川の小説「羅生門」の題字。わずかに平たくつぶれた字で、まがまがしい雰囲気を醸す。
いずれも揮毫(きごう)したのは、一人のドイツ語学者だ。
福岡県・久留米出身の菅虎雄(1864~1943)。菅は漱石と第一高等中学(現東大)の同窓で、卒業後に親睦を深めた。
菅は、漱石を愛媛県尋常中(現松山東高)や第五高(現熊本大)の英語教員として推薦した。菅の後押しがなければ、松山が舞台の「坊っちゃん」や、小天(おあま)温泉(熊本県玉名市)がモデルの「草枕」なども生まれ得なかったと言える。
書をたしなんだ菅への揮毫依頼は多く、他にも漱石の「文学評論」や講演集「社会と自分」、芥川の「傀儡師(かいらいし)」の題字を手がけた。
また芥川は一高で菅に学び、菅の息子の家庭教師を務めたほどの間柄だ。漱石を「先生」と慕い、繰り返し文章にも書いた芥川。2人の作家をさらに強く結ぶかのように、力強い書の存在がある。
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久留米市美術館で開催中(2024年1月28日まで)の企画展「芥川龍之介と美の世界 二人の先達―夏目漱石、菅虎雄」。漱石の親友だった菅虎雄が現在の久留米市出身という縁から、同館が企画したものだ。文学と美術。異分野ではあるが、小説の作品世界や作家の創作姿勢が「美術」を通すことで異なる角度から見えてくる。文学と美術との間を行き来してみたい。
=(12月16日付西日本新聞朝刊に掲載)=
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芥川龍之介と美の世界 二人の先達─夏目漱石、菅虎雄 2024年1月28日(日)まで、久留米市野中町の市美術館=0942(39)1131。西日本新聞社など主催。一般1200円、65歳以上900円、大学生600円。高校生以下無料。
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