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【コラム】「肉筆浮世絵」展 絵師彩々 筆くらべ<上>勝川春章「桜下三美人図」 黄金期の名手 完璧な構図(西日本新聞掲載)

2025/04/29 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

 ツクシやタンポポの咲き乱れる春の川辺を対岸に見下ろしながら桜の下を散策する3人の美人の姿を描いたものです。生命感みなぎる草花のみずみずしさに負けない華やいだ3人娘の姿が、うららかな春の景色の中に溶け込んでいます。

桜下三美人図 勝川春章 
江戸時代(18世紀) 
出光美術館蔵

 煙管(きせる)を手にして後ろを向いた黒い着物の女性が花見遊山の言い出しっぺでしょうか? また振り袖の女性は一番年下なのでしょうか? 顔立ちも初々しさが感じられます。扇を手にした女性と一緒に、桜の道を歩きながら、楽しい話題に熱中しているようです。横に張った日本髪の鬢(びん)や襟足の髪の毛は一本一本丹念に描かれ、着物の柄もしぼりや染めの文様が細かく描き分けてあります。

 3人のたたずむ構図はこれ以上ないほど完璧に配置され、絵師の筆の冴(さ)えを感じさせる逸品です。これを描いた勝川春章(1743~93)は勝川派の開祖で、浮世絵黄金期の代表的な絵師の一人として知られます。個性を感じさせる役者絵や相撲絵、そして美人風俗図を能(よ)くし、その典雅で優艶な画風から肉筆美人画の最高峰に位置づけられます。また、多くの門人を輩出し、浮世絵の発展に寄与しました。
(出光美術館(門司)主任学芸員 立畠敦子)

◇◇
 浮世絵といえば、木版画がよく知られているが、ほとんど全ての絵師は版画の下絵だけでなく肉筆画を制作した。出光美術館(門司)で開催されている展覧会「肉筆浮世絵―師宣・春章・北斎たちの筆くらべ」では、出光コレクションから精選した31件を展示。その伸びやかで精彩に富んだ表現を紹介する。

▼開館25周年記念 肉筆浮世絵―師宣・春章・北斎たちの筆くらべ 5月25日(日)まで、門司区の出光美術館(門司)。一般700円、高大生500円、中学生以下無料。出光美術館(門司)=093(332)0251。
【主催】出光佐三記念美術館、出光美術館、西日本新聞社【協賛】出光興産

=(4月23日付西日本新聞北九州・京築版朝刊に掲載)=

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