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現代の超情報化社会における神話の創造者は誰か?【学芸員コラム】

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アルトネ編集部
2017/12/08
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福岡アジア美術館で開催されている「サンシャワー:東南アジアの現代美術展 1980年代から現在まで」。本企画を担当する福岡アジア美術館学芸員3名によるリレー形式でコラムを寄稿いただきます。第1回は「爆音映像ナイト☆タイの新鋭映像作家コラクリット」(12/8,15,22各日19:20〜20:00に展示室内で開催)が話題のコラクリット・アルナーノンチャイの作品についてです。(編集部)

絵の具にまみれながら広大な湿地帯を全力で駆け抜ける金髪の青年、女性ダンサーのスキャンダラスなボディーペインティング、バンコク市内の超高層ビル群を見下ろすドローン、ビリビリに破けたデニムを着ながらヒップホップで身体をくねらせる若者たち、観光地化された過剰な装飾の新興宗教寺院、トランスジェンダーの半裸のパフォーマンス…、一見するとミュージックビデオのような刺激的な映像は、その24分54秒の中にタイの宗教性の表裏と過度な情報化社会の様相、同時代のカウンターカルチャーなどを詰め込んだ、多面的な映像が断片的に重なり合う物語として完成されている。

コラクリット・アルナーノンチャイは1986年タイのバンコク出身、現在はニューヨークとバンコクを拠点に活動している。コロンビア大学では世界的に著名なタイ人アーティストのリクリット・ティラヴァ-ニャのもとで美術を学んだ後、MOMA PS1(ニューヨーク)、UCCA(北京)、パレ・ド・トーキョー(パリ)などで立て続けに個展を開催。タイ現代美術を代表する気鋭の若手作家としてアートシーンを軽やかに渡り歩く。現在、「サンシャワー:東南アジアの現代美術展 1980年代から現在まで」展で紹介されている映像作品≪おかしな名前の人たちたちが集まった部屋の中で歴史で絵を描く3≫(2015)は、2013年頃から開始した、作家の自伝的なテーマを中心に据えた映像3部作の完結編だ。

「ハードディスクのおかげで私たちは、待ちわびていた精霊に近づくことができる」
映像の途中で語られる啓示のような台詞は、生々しい人間の「生」と「欲望」を包括する現代の資本主義社会、またインターネットを介して無限のデータ(ハードディスクは生成されたデータを外部記憶する装置)を生みだす超情報化社会を、秘教的な「神話」として仮定している。そして、度々流れるドローン(自律式の無人航空機)で撮影した鳥瞰的な映像は、人間たちの思想や信仰を混合させた「諸教混淆」の様子を見守る神の目として縦横無尽に飛行しながら様々な情景を映しだす。現代社会が抱える混沌を新たな神話としてアップデートした本作は、作家の自作したアップテンポのラップとともに会場に響き渡る。当館では特別に12月8日、15日、22日の三日間、映像を「鑑賞」するだけではなく「身体で体感」してもらいたく『爆音映像ナイト』を企画する。この作品の熱量をぜひ会場で感じ取ってほしい。

(福岡アジア美術館学芸員 趙純恵)

 

記事内画像すべて

コラクリット・アルナーノンチャイ
≪おかしな名前の人たちが集まった部屋の中で歴史で絵を描く3≫(部分)2015、ミクストメディア、サイズ可変、作家蔵
Korakrit Arunanondchai
Painting with history in a room filled with people with funny names3(detail)
2015,  Mixed media,  Dimensions variable, collection of the artist
Courtesy: Carlos/Ishikawa London, C L E A R I N G New York/Brussels, BANGKOK CITYCITY GALLERY

 

<サンシャワー展緊急企画>
爆音映像ナイト☆タイの新鋭映像作家コラクリット

■上映日
12月8日(金)、15日(金)、22日(金)各日とも19時20分〜20時に開催
■料金
要展覧会チケット(一般800円、高大生500円、中学生以下無料)
■会場
福岡アジア美術館(福岡市博多区下川端町3-1 リバレインセンタービル7・8階)
■問い合わせ先
福岡アジア美術館 TEL:092-263-1100

 

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