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【ARTNEゲストコラム】ギャラリスト三潴末雄が語る常識破りの池田学展

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アルトネ編集部
2017/04/17
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1973年佐賀県多久市生まれのアーティスト池田学。2017年1月20日(金)~3月20日(月・祝)まで佐賀県立美術館で開かれた個展「池田学ーThe Pen 凝縮の宇宙」は同館過去最多の動員数を記録して幕を閉じた。地方都市として異例とも言える成功を収めたこの展覧会について、池田が所属するミヅマアートギャラリー エグゼクティブ・ディレクター の三潴末雄氏に池田作品の魅力や地方都市での美術展について語ってもらった。(編集部)
 

「池田学展 The Pen ー凝縮の宇宙ー」佐賀県立美術館 会場風景
撮影:宮島径
©️IKEDA Manabu, Courtesy Mizuma Art Gallery
 

尊敬する現代アートの先駆者である荒川修作が、「常識っていうのは一番大きな病気なんだ」と語っていた。
5年前に佐賀県立美術館に池田学展開催の可能性を打診した時の美術館からの返答は、「佐賀出身の作家なので開催に興味があるが、まずは東京で開催してから佐賀に巡回展としてやってくるのが望ましい・・」であった。
「まずは東京で開催、そこで評判がよければ地方の人々は観に来る」これが今も昔も地方美術館の常識的な考え方なのだ。更に現代アート展の開催となるとハードルが高く、「まだ開催は早い、私の地方の人々はルノアール、シャガールなどのモダニズムの絵画展には足を運ぶが、小難しい現代アート展を開いても観に来ない」
こうした常識にとらわれた地方美術館の目を開かせるには時間が掛かった。2008年に現代アートの展覧会「ネオテニー・ジャパン 高橋コレクション」展を初めて鹿児島県霧島アートの森で開催した当時は、地方美術館には現代アート展はまだ早いと断られていたのだ。高橋コレクション展は、その後2017年までに、15の地方美術館での開催を実現させた。現代のアーティスト達が創り出す魅力的な作品は地方の人々と共有する時代になってきたのである。
一方で、発展途上の未だ無名の現代作家である池田学の個展を佐賀で開催するには、色々な抵抗や常識をぶち破らなければならなかった。

「池田学展 The Pen ー凝縮の宇宙ー」佐賀県立美術館 会場風景《誕生》
撮影:宮島径
©️IKEDA Manabu, Courtesy Mizuma Art Gallery

 

52日間で95,740人の来場者があった池田学展

同じ佐賀県立美術館で2014年に開催された「ポーラ美術館コレクション」展(ピカソ、ルノアール等の作品を展示)が作った来場者数63,000人の記録を池田学展が軽々と破り、記録的な動員数となった。佐賀のテレビ局から何故このように多くの人々が観に来たのかというインタビューに、「第一義に作品の力、3年3ヶ月かけて制作された《誕生》の持つ凄さが人々を魅了した。そして佐賀県の人々のおらが街の若い作家を応援する熱い気持ちが池田学現象を佐賀に巻き起こした」と答えた。
池田学展はこれから金沢や東京に巡回する。地方で巻き起こったアートの旋風はやがて東京を巻き込み、日本全体に波及すると期待している。


三潴末雄(みづま・すえお)

ミヅマアートギャラリー エグゼクティブ・ディレクター 。東京生まれ。成城大学文芸学部卒業。1980年代からギャラリー活動を開始。批評精神に溢れた日本やアジアの作家を世界に紹介するとともに、展覧会のキュレーションを行うなど、活動の幅を広げている。著書に 『アートにとって価値とは何か』 (幻冬舎刊)、『MIZUMA 手の国の鬼才たち』(求龍堂刊)がある。

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