鋤田正義写真展 IN NOGATA 2018 「ただいま。」
2018/04/03(火) 〜 2018/05/20(日)
09:30 〜 17:30
直方谷尾美術館
大迫章代 2018/04/18 |
皆さんは、世界中で“SUKITA”と呼ばれ、賞賛を集める日本人写真家のことをご存知だろうか。デヴィッド・ボウイ、イギー・ポップ、マーク・ボラン、YMO、寺山修司、忌野清志郎など、数々の時代の寵児たちの“永遠のカリスマ”を切り取ってきた写真家・鋤田正義。今年5月で80歳を迎える彼とその作品たちは、世界各地の写真展に引っ張りだこで、いまなお現役カメラマンとして、精力的に活動を続けている。彼を尊敬するミュージシャンやクリエイターなど、そうそうたる著名人との会話やインタビューを通して、彼の創作に迫るドキュメンタリーが、本作「SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬」だ。
「SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬」は5月19日(土)~全国ロードショー。福岡では6月2日(土)~KBCシネマにて公開。
©2018「SUKITA」パートナーズ
福岡県直方市出身ということで、故郷・直方市の直方谷尾美術館で写真展も開催中。そんな話題の写真家・鋤田正義のドキュメンタリー映画を、試写で一足早く見せてもらった。
「SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬」は、2016年4月、国立代々木球技場第一体育館で行なわれた布袋寅泰のライブから始まる。そこには「今の時代のライブを写したい」と、ステージと客席の両方にカメラを向ける鋤田の姿が。映画は、このライブの模様とパフォーマー、布袋寅泰を音楽の道へと誘った1枚の写真から、鋤田のキャリアを語り始める。
布袋寅泰はマーク・ボランの音楽からではなく、この鋤田の撮った1枚の有名な写真からギターに興味を持ったのだとか。その下のイギー・ポップ、右側のデヴィッド・ボウイの写真も音楽好きならきっと見たことがある有名なポートレートだ。
その後、イギー・ポップのライブ撮影のためロンドンを訪れた鋤田は布袋とともに、マーク・ボランが事故死したロンドン郊外を訪れる。そこにもやはり例のマーク・ボランの写真が。世界中のファンにとっても鋤田が撮ったこの1枚は、時を経てなお色あせない輝きを放つ、印象的な写真だという証だ。
カメラは、国内外を休むことなく撮影や展示会で飛び回る鋤田を追い、その仕事ぶりと、鋤田のキャリアを彩る新旧さまざまなアーティストとの親交の歴史を紹介していく。その中でもかなり大きな部分を占めるのが、鋤田のキャリアを決定づけたとも言えるデヴィッド・ボウイとの出会いだ。1972年、T・レックスの撮影でロンドンを訪れた鋤田は、当時デビューしたばかりのボウイと運命的な出会いを果たす。そして以後40年以上にもわたって、彼のポートレートを撮り続けることになるのだ。
鋤田の口から語られるデヴィッド・ボウイとの撮影セッションの舞台裏。どれも有名なレコードジャケットやポートレートで、その撮影秘話はひと際興味深い。
映画の中で、音楽関係者は「鋤田ほどのデヴィッド・ボウイやその他のアーティストの本質をとらえられた写真家はいない」と口ぐちに語る。とはいえ、世界中にうまいカメラマンはごまんといるし、かっこいい写真を撮る商業カメラマンだって山ほどいる。では、鋤田が撮る写真は、他のカメラマンが撮る写真と何が違うのか…?
ある人は、彼のことを常に周りのささいなことも見逃さない「天性の観察者」だと言う。またある人は、最先端の技術に積極的で「いまだに進化し続けている」と言う。いずれもしかり。ただ個人的な印象を付け加えるとすれば、それは彼がすべての被写体に対して、常にフラットな姿勢でいられるからではないか、と思った。
とりわけ、数々の大スターとのセッションを経験してきた彼が、高校時代に撮った母親のポートレート(夏祭りの盆踊りに出かける前の母親を捉えたモノクロの写真)を、「自分にとっての忘れられない1枚かもしれない」と語るシーンは印象深い。
大スターのポートレートも、ハイセンスな広告写真も、映画の主役も脇役も、母親も道端の花も、何もかもを「フラットな視点で捉える眼差し」。その姿勢にこそ、被写体の「永遠の瞬間」を捉える“SUKITA”の秘密がある、とみた。
蛇足ながら、ジム・ジャームッシュ監督の「ミステリー・トレイン」や是枝裕和監督の「ワンダフルライフ」のスチール写真も鋤田正義が撮っていたと知り、今さら感動。印象的なスチール写真は、観るだけでそのストーリーと空気感を思い出させてくれる。ジャームッシュや永瀬正敏、是枝監督の語る撮影裏のエピソードを聞いていたら、昔観た映画をもう一度見返したくなってしまった。
SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬
出演:鋤田正義 布袋寅泰 ジム・ジャームッシュ 他
監督:相原裕美
配給:パラダイス・カフェ フィルムズ
©2018「SUKITA」パートナーズ
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