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福岡アジア美術館
浅野 佳子 2019/05/29 |
3月24日、福岡市美術館リニューアルオープン直前に放送された、LOVE FMの番組・明治産業 presents「OUR CULTURE, OUR VIEW」とARTNEのコラボ企画として、放送内容を一部を抜粋してご紹介します。LOVE FMのパーソナリティ佐藤ともやすさん・三好剛平さんを聞き手に、福岡市美術館の岩永悦子学芸課長、鬼本佳代子主任学芸主事、吉崎謙作運営課運営係長が、新しい美術館について語りました。
入口も気持ちも、市民に開かれた美術館に
LOVE FM 三好剛平(以下LOVE三好):まずは、福岡市民が自慢できる美術館に仕上げていただいて、ありがとうございます!という気持ちでいっぱいです。今日はこのリニューアルの背景にある思いやポイントをうかがっていこうと思います。それぞれに「推しポイント」をうかがってもいいですか?
岩永悦子学芸課長(以下岩永):まずは、新しい入口ができて大濠公園に直結しました。これは建築の変化ですが、わたしたちの気持ちの変化でもあると感じています。もともとこの入口となった場所には、かつて美術館を愛する人たちの隠れ家的な存在であった読書室がありました。そこに今回カフェをつくり、公園につながるアプローチにしたわけです。正直胸の痛い決断でしたが、いざできあがってみると、公園とここを利用する人々との距離が本当に近く、「わたしたち、本当につながったんだ!」という感動がありました。しかも「美術館から眺め下ろす」のではなく、「水平につながる」という、対等な関係なのがまたいいなぁと感じています。
LOVE FM佐藤ともやす(以下LOVE佐藤):確かに、両手を広げてどうぞ!と言っているようで、象徴的ですね。ほかにわたしたちから見えない部分の変化はありますか?
岩永:美術館がリニューアルに向けてクローズするときに、「未来が見えるようなクロー
LOVE佐藤:なるほど。目に見える部分だけのリニューアルではなく、今後届けるものに対しても、力を蓄える重要な期間だったのですね。続いて鬼本さん、いかがでしょうか?
家族で多様に使える美術館にこだわる
鬼本佳代子主任学芸主事(以下鬼本):わたしは、キッズスペースを推します。今回も、リニューアル前のキッズコーナーと同じく、久留米のアーティスト・オーギカナエさんにつくっていただくことになりました。しかし、今回は、彼女に決定するまでにコンペを実施し、いずれの方も一生懸命取り組んでくださって、アーティストの本気を見ることができた、得難い機会でした。結果、安全安心でとても楽しいキッズスペースができたと自負しています。
LOVE三好:さらにわたし自身、娘がいる父として、女性専用だけでなく男女兼用の授乳室があるというのも素晴らしいと感じました。なんといっても、美術館に来る日というのは、家族的には休日なわけです。このときに子育てに参加しやすい環境が整えられているというのは、社会的にもいいメッセージだと思います。
LOVE佐藤:番組には、こんなメッセージも届きました。リスナーさん自身も小さい頃から親に連れられて美術館に通っていたが、当時は騒げない場所であまり好きな場所ではなかったそうなのですが、いま親になって自分が子どもを連れていける場所になっているのがうれしいと。
鬼本:それは、ぞくっとくるほどうれしい話ですね。
LOVE佐藤:小さい頃からアートに触れることができる環境をつくるというのは、いいことだなぁとそのメッセージを読んで感じました。
鬼本:しかもその空間を、既成のものを持ってくるのではなく、福岡市美術館オリジナルで、地元のアーティストと一緒につくったというのは、意義が大きいと思います。
さらに、休館中の教育普及活動についていうと、小中学校や公民館、病院などへ美術体験を持ち出す「アウトリーチ」に取り組みました。そのときに痛感したのは、郊外に行けば行くほどなかなか美術体験をしにくい環境というのがあるのだなということ。「美術館に行ったことがなく、来てくれてよかったです」と言ってくださった方も多くて。行くことができてよかったなと思いますが、美術館が開いたので、こちらに足を運んでくれるとさらにうれしいですね。
ふだん美術館に来ない人が興味を持つには?
LOVE佐藤:これまで学芸員のお二人に話をうかがいましたが、吉崎さんはちょっと立場が異なるのですか?
吉崎謙作運営課運営係長(以下吉崎):そうなんです。わたしは学芸員ではなく、福岡市役所内の人事異動でたまたま3年ほど前に異動してきた、普通の事務職員です。
LOVE三好:とおっしゃいますが、吉崎さんは「福岡市美術館の中の人」(※現在は“だった人”)として、Twitterやブログでの発信をされていて、その内容に、美術館の運営側にこんなに思いがある人がいるのか!と、勝手に福岡の誇りだと思っていました。
吉崎:ブログにも書いているのですが、わたし自身が美術館に配属されるまで、恥ずかしながらあまり美術館に足を運んでいない人間でした。それが美術館で仕事を始めてみると、「美術館、おもしろいやないか!」と。これは、これまで来ていない人に何とか伝えなければならない。それができるのは、学芸員ではなく、外からやってきたわたしのような人間ではないのか?という思いで発信していました。
不思議と学芸員の二人からは、コレクションの話や展示室が新しくなった話が出ませんでしたが、それが今回のリニューアルの姿勢をよく表しているところかもしれません。美術館を開いていくのだという意識が、一同に浸透しているというか。
岩永:確かに言われて気が付きましたが(笑)、展示についてはもちろん最大限に努力をしています。それは美術館人として当たり前のことです。今回はさらにそれに加えて、館をあげて、担当ごとの垣根を低くして、一緒にやったという意識は強いかもしれません。
吉崎:今回一番異色だったと思うのが、福岡マラソンで、テントをたててリニューアルのPRを行ったこと。そのとき、マラソンに来ている人たちが、美術館のチラシやバッジをもらって喜んでいる様子を目の当たりにして、学芸員も感動していました。ふだんあまり来館していない人との接点を持てたのは、この休館中の活動で得たことかもしれません。
LOVE三好:当たり前だと思っていたものを、外の目で見てもう一度価値づけられたということかもしれませんね。
岩永:福岡市美術館には、ダリやミロなどの素晴らしいコレクションがあります。そしてこれは、美術館のコレクションではなく、「市民のみなさんの」コレクションなのです。マイ・コレクションとして、「自分たちはいいものを持っているのだ、えへん」とプライドを持っていただけるといいなと思います。
鬼本:言いたいこと、伝えたいことはたくさんありますが、とにかく一度来てください。このリニューアルは、次のステップへの始まりです。市民のみなさん、利用者のみなさんと、新しい美術館をつくっていきたいと思いますので、これからもよろしくお願いいたします。
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