特別展「室町将軍 ―戦乱と美の足利十五代―」
2019/07/13(土) 〜 2019/09/01(日)
09:30 〜 17:00
九州国立博物館
秋吉真由美 2019/08/09 |
九州国立博物館(福岡県太宰府市)で開催中の特別展「室町将軍 戦乱と美の足利十五代」。初代将軍である足利尊氏から15代続いた室町将軍たちの歴代の肖像や、ゆかりの文化財の数々を一堂に展示します。約240年の軌跡を紹介する本展の魅力と見どころをお伝えします。
オープニングセレモニーで九州国立博物館の島谷弘幸館長は「今、室町時代がアツい」と断言。「書道や茶道、華道と日本の芸事はすべて室町時代に定着し、戦国時代へつながります。将軍たちが独自の美意識の中に集めたゆかりの文化財をじっくりと鑑賞してください」と島谷館長。「それぞれがその時代の美意識を持って鑑賞するものですが、当時の将軍たちがどう感じて、これらの展示品を収集、鑑賞してきたのか、時代と空間を超えて、ぜひここで味わっていただければ」と話していました。
本展は、刀剣乱舞で“刀剣男士 大般若長光”を演じている声優・三木眞一郎さんによる音声ガイドを聞きながら巡るのがオススメ。刀剣ファンは聞き逃せない、ボーナストラックも用意されています。
期待を胸に入口へ向かうと、目に飛び込んできたのは15代の将軍の特徴をイラストで分かりやすく解説する巨大パネル。馬にまたがるシブいイラストは“新時代を切り開いた大将軍”のキャッチコピーが似合う尊氏、“上司にするならこの男”と紹介される2代義詮、“インテリ将軍”4代義持、“イケメン若武者”9代義尚など、15人の室町将軍が描かれています。ちなみに、このイラストパネルは写真撮影OKです!
奥へ進むと、まずは1章「南北朝の動乱と足利尊氏」。肖像画や愛用品などを展示し、尊氏の事績を紹介しています。
初代将軍・足利尊氏の室町時代までに描かれた唯一の肖像画です。くっきり二重に真ん丸の鼻、温厚さが表れた顔つきです。
このきらびやかな扇子は、足利尊氏が愛用していた軍扇。表には金箔の日輪、裏には銀箔で月輪がデザインされています。
一行目に「宰府」の文字。太宰府にいた尊氏が上京する際に石清水八満宮に祈祷を依頼したものです。蜜書とも呼ばれる書状のサイズが小さいのは、元結などに忍ばせるため。尊氏が太宰府に滞在していたことを示す貴重な史料です。
長らく尊氏像とされてきた、おなじみの肖像画。尊氏でないのなら、一体誰…? と気になるところですが、画中の馬具の家紋から予想すると、尊氏の側近・高師直(こうのもろなお)かその子である師詮(もろあきら)ではないかと言われているそうです。頭上の花押は、2代将軍義詮(よしあきら)のもの。
続いて、2章「室町の永華―義満・義持と唐物荘厳」では、室町幕府最盛期を築いた義満、義持ゆかりの品々を展示しています。
わずか11歳で3代将軍となった義満ですが、政治手腕は見事なものだったとか。38歳で出家してからも影響力のある人物だったといいます。この肖像画は出家姿を描いたもので、上部には3首の和歌が書かれています。
勘合貿易を開始した義満が明の永楽帝から授かった勅書。継ぎ目のない紙を使用しており、機械のない時代にどうやって一枚の紙で作っていたのか…? という不思議な点も。表面はツルツルした上等な紙を使用しているそうです。
義満が始めた勘合貿易の仕組みを学べる体験コーナーも!
勘合とは、明が発行した「身分証明書」兼「貿易許可証」のこと。正式な使節であるか、朝貢品の数などが変わっていないかなどを証明するため、勘合の割印・割書きがぴったり合えば貿易ができるという流れです。勘合を手にもって、勘合の割印と合うページを探し出しましょう!
義持が「丸いひょうたんでヌルヌルした鯰をおさえとることができるか」をテーマに画僧の如拙(じょせつ)と31人の禅僧に命じて作らせた禅画です。水墨画の傑作と言われています。ぜひじっくりと堪能してください。
続いて、3章「将軍権力のゆらぎと成熟する文化―義教・義政の時代」。クジ引きで6代将軍となった義教(よしのり)と息子である義政にゆかりのある品々が並びます。
クジ引きで6代将軍となった強運の持ち主(?)義教。強権ぶりが反発を買い、暗殺されて最期を迎えます。
義政の御用絵師であり、狩野派初代の狩野正信による水墨画。狩野正信唯一の国宝です。
最後は、4章「戦国の将軍たち―流浪する将軍と室町幕府の終焉」。応仁の乱、飢饉、民衆による一揆により幕府は終焉へと近づきつつあります。大名たちの覇権争いに巻き込まれ、将軍職を一門で争いあい、幕府の存続を探っていた時代です。
11歳で将軍となった義輝の肖像画。大名たちの関係改善に尽力し、政治手腕を発揮するものの、最期は襲われ、30歳で自害してしまいます。
義輝像の下絵。上記の義輝像とほぼ同じ図様ですが、下絵となるこの絵には頬のあばたが描かれているため、こちらの方がより本物の義輝に近いと言われています。
京都の将軍御所が描かれた「洛中洛外図屏風」のうち、現存する最古の屏風です。
剣豪将軍と呼ばれる義輝ゆかりの名刀。人気ゲーム「刀剣乱舞」のキャラクターにもなっています。
最後は、京都・等持院以外で初公開となる全13軀(く)の将軍坐像。
室町将軍たちがずらりと並んでいる様子は圧巻で、展示されている部屋に一歩足を踏み入れると空気がスッと変わるような感覚を味わえます。
しかも、ここは一部エリアからの写真撮影がOK! 室町将軍たちに囲まれての写真撮影をお忘れなく。将軍たちの人生や魅力を知った後は、彼らの顔つきをじっくり見て、その生き方に思いをはせてみては。
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