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【連載】山出淳也 アート、まちに出る 8

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山出淳也
2020/12/24
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僕が思う豊かな地域とは(後)​

 別府市で開いた2007年のシンポジウムの際、僕も一つのイメージを発表した。

 それは、中心市街地の空き店舗のいくつかを改修し、まちづくりの拠点やアートスペース、学生団体の作業場にするなど、中心街と関わってこなかった方々の関わり代(しろ)にするというもの。それぞれの場が生き生きと動き始めれば、新たな来訪動機を生み、これまで訪れることがなかった方が町を歩き始めるのでは? それはまるで星座みたいだな。そう考え、ワクワクした。

 夢を語らなければ何も始まらない。たとえそれがおぼろげであっても、声にして伝えることで他の人に伝播(でんぱ)する。一人の妄想でしかなかったことが、他の人にとっても見たい世界に変わる。

 この構想が本当に実現していくなんて、発表したときは考えてなかった。別府市が事業費を負担し、08年に工房やフリースペースなど八つの活動の場が誕生した。これらを「プラットフォーム」と名付けた。そして、この事業が動き始めたことで市内に類似する場所も生まれた。

 その一つが、別府の路地裏にできた「プントプリコグ」。アートに関わる大分県外の友人が設立した。ミニキッチン付きで、季節ごとに使う人が変わる小さなレンタルスペースだ。ある時は角打ち、ある時は洋服のリフォーム店、ある時はキャンプ料理を提供するなど、自由な視点で多彩な出店者を選んでいる。まさにフリースペースだ。

 運営する彼女たちは、面白い未来を共に創(つく)ってくれるパートナーを探すネットワークと、ユニークな出店者を選ぶ目を持つ。だからこそ、僕たちは次の店が何になるのか楽しみで通う。つまり、この場所のファンになる。開設から8年がたち、ここから巣立ち、別府に店舗を構えた方も少なくない。そのいくつかは人気店となり、コロナ禍の今でも繁盛している。

 関わり代と、その場を活性化させ続ける人の存在が、いま町に求められている。そして、その人たちは自分が思う素敵な未来はこんな姿だ、と自らの言葉で語り続けている。(やまいで・じゅんや=アーティスト、アートNPO代表。挿絵は鈴木ヒラクさん)

=(11月12日付西日本新聞朝刊に掲載)=

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