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【連載】山出淳也 アート、まちに出る 11

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山出淳也
2021/01/12
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新手の詐欺師と思われる​

 帰国した僕はアベリアに電話した。別府市在住者で、かつ連絡先を知っている唯一の知り合いだ。

 僕にも増して突飛(とっぴ)な性格の彼女。「私は別府になりたい」と言う。「この町の温泉は誰をも分け隔てなく受け入れる。私は別府そのものにいつかなる」と言うのだ。そんな彼女は町中が知り合いだらけ。歩くたびに呼び止められ、その都度長話を始めるものだから、100メートル進むのに1時間かかることもザラである。

 僕は「別府を特集したあの記事を読んだ。別府でアートイベントを開きたい。小さなことから始め、数年はかかるだろう。多くの人に理解してもらい、実現を目指したい」と話した。彼女は記事に登場していた方々をはじめ、町のキーパーソンや若者たちを紹介してくれた。

 そんなある日、別府のまちづくりに関わる方が集まる拠点のサロン岸に向かった。部屋のほとんどを占める大きなテーブル。その上の飲み物は全てセルフサービス。皆ここのママの人柄に惹かれて集まっている。

 どんなことをしたいのかを説明した。ちんぷんかんぷんという空気が漂う。何となく誰かが「良さそうな企画だね」と心にもないことを口走る。皆大人なのでウンウンとうなずくが、怪訝(けげん)な表情は隠しようがない。どこに行っても手応えは同じようなものだった。画塾のセンセイからは「やめちょけ」と一蹴された。

 そんなある日、ツルタさんに会いに行った。記事に出ていた、老舗ホテルの経営者だ。「へーへー。面白いね。これはいけるかもしれない」。一通り説明を終えると、僕の顔を見てそう言った。その言葉に救われた。そして、この日からツルタさんは僕のまちづくりにおける師匠になった。

 数年たち「新手の詐欺師だと思ってたけどなぁ」と、あの晩、サロン岸に同席していたノガミさんは笑いながら言う。ツルタさんになぜあの時、詐欺だと思わなかったのか聞いたことがある。

 「簡単だよ。詐欺が数年も待てるわけがない」。その通りだなと思った。(やまいで・じゅんや=アーティスト、アートNPO代表。挿絵は鈴木ヒラクさん)

=(11月17日付西日本新聞朝刊に掲載)=

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