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【連載】山出淳也 アート、まちに出る 12

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山出淳也
2021/01/14
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初めての助成金申請(前)

 僕たちは、常に資金調達に追われている。

 一般的にアーティストは、作品を欲しい人に販売し生計を立てる。作品を購入した収集家は部屋に飾り、友人を招き披露する。そんな、経済的に恵まれた限られた人のみが楽しめる場面も確かにある。

 かたや、僕たちが取り組むアートを通じたまちづくりは、地域の活性化などを目的とする非営利事業だ。イベント参加者のほとんどが愛好家であったとしても、結果的に地域の多くの人の利益につながるかで評価される。

 しかしながら、問題が二つある。一つ目はなぜアートなのか。二つ目はこの地域でなければならない理由は何か、である。

 「人が生きていくためにはパンが必要だ。そして、心が育つため、人が人らしく生きていくためにはアートも必要だ」。そんな建前を旗印に、アートは美術館を飛び出し、日常の風景に突然割り込んでくる。望んでいない人にとっては乱暴な話だ。この地域らしいアートのあり方を饒舌(じょうぜつ)に述べても、それは作者や企画する側からのお仕着せに過ぎない。その一方通行をどう解消するか。皆そこでつまずき、ただただ社会の無理解を嘆く。果たしてそうなのか? 問題の在(あ)り処(か)は僕たちの外側にあるのだろうか?

 2005年、仲間を募りBEPPU PROJECTを立ち上げ、企画を練った。多くの人に参加してもらいたいと考え、無料イベントも企画した。しかし、考えたはいいが資金がない。全くない。そのため自治体の補助金を調べ、申請書を書いた。僕のまちづくりにおける師匠のツルタさんに見てもらった。「0点だね」と即答された。何度も書き直し、ようやく「ギリギリ合格」と言ってもらえる書類ができた。

 何とか書類審査をパスし、審査員に直接プレゼンする機会を得た。「やっぱりアートだし、興味を持ってもらうためには、超絶カッコイイものじゃなきゃだめだ」と考え、徹夜を重ね工夫を凝らした。「我ながら良い出来だ」。そう思った。

 そして、人生初めてのプレゼンの日がやってきた。(やまいで・じゅんや=アーティスト、アートNPO代表。挿絵は鈴木ヒラクさん)

=(11月18日付西日本新聞朝刊に掲載)=

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