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【連載】山出淳也 アート、まちに出る 13

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山出淳也
2021/01/19
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初めての助成金申請(後)

 昔から極度のあがり症で、人前に立つのが苦手だった。

 大分県の補助金最終審査のプレゼンテーション。自分の順番を待つ間、動悸(どうき)が早くなり、当日配布された資料を見て気を紛らそうとした。そこでようやく気がついた。これは県内各地の観光事業者が、祭りなどに磨きをかけ観光素材として育てるための補助金だった。それすらも読み込めていなかった。

 ついに自分の順番がきた。スライドを映し説明を始めた。「良い出来栄えのはず、大丈夫」と思い、審査員を見た。何を言っているのかさっぱり分からないと首を振る人、目を閉じてしまう人。僕は途中からパニックになり、早く時間が過ぎてほしいとだけ願った。

 地獄の10分がやっと終わった。審査員から「君は質の高い事業を行うと何度も連呼するが、それを誰が保証するのか」と問われた。「僕が保証します」と返した。会場から失笑も漏れ、それからのことは覚えてない。

 後日、ペラペラの封筒に入った審査結果が届いた。当然ながら不採択。「アートなんてよく分からない。だけど楽しそう」と、期待してくれている別府の皆に申し訳ない、彼らに合わせる顔がないと悲しくなった。別府での活動は終わってしまったと泣きそうになった。

 そんな気持ちを引きずっているある日、電話が鳴った。県庁からだった。「前回の審査では採択者が出ませんでした。よってもう一度プレゼンの機会を与えることにします」。奇跡が起きたと思った。今度こそと、何が悪かったのか必死に見つめ直した。

 僕は自分が話したいことだけ語り、見せたいものだけ見せていた。独りよがりにも程がある。だって審査員のことなんて、全く頭になかったのだから。今度はちゃんとコミュニケーションしなければと思い、相手は何を聞きたいのだろうと考えた。なぜアートじゃなきゃダメなのか、別府で行う理由とは何か、もう一度真っさらな状態から考えた。

 1カ月後、採択通知が届いた。失敗から学べたこの日々は、僕にとって財産だ。(やまいで・じゅんや=アーティスト、アートNPO代表。挿絵は鈴木ヒラクさん)

=(11月19日付西日本新聞朝刊に掲載)=

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