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【連載】山出淳也 アート、まちに出る 15

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山出淳也
2021/01/26
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あなたはなぜ今、ここにいるのか

 22年前の夏、僕は現在の大分県由布市の自宅から、福岡市の大濠公園まで歩いていた。

 福岡市美術館でアベ君との展覧会が企画されていた。僕のほとんどの作品は質問を作ることから始まる。問いかけによって集まった何かが美術館に並ぶ。それが僕のアートだ。

 自宅から美術館までの地図を見た。子どもの頃に住んでいたいくつかの町がある。思い出は断片的で、ある瞬間が現れては消え、を繰り返す。「なぜ、あんな感情になったのだろう、ああそうか、あの時こんな理由でそこにいたんだ」と、ようやく思い出す。いろんな記憶がごちゃ混ぜになりながら、それらが今の自分の一部を形成していく。そう言えば、また親の転勤が決まった時の感情を思い出した

 「あなたはなぜ今、ここにいるのか」。今回の質問をそう決めた。

 いろいろな場所を経由しながら福岡に向かうため、およそ180キロを10日間くらいかけて歩いた。この日も山道を歩き、偶然出会った人に問いかけていた。

 長閑(のどか)な風景の中、自転車を押す女子中学生に話を聞いた。彼女は「出てったらお母さんが寂しいやろ」と言う。自宅に向かい、彼女のお母さんにも同じ問いを投げかけた。

 「ここに嫁で来たけん。この町は好き。他のどっかに行こうとは思わない。この山が一番好き。もぅ、どげんきれいかですか? 下から見てみらんですか。屏風(びょうぶ)のようやろ、こん山は。果物はねぇ、柿がある、葡萄がある、みかんがある、なんでんあるばってん、人は良し、災害もなく、最高じゃろうと思うんですがね」

 美術館の展示室。細長い台の上に、たくさんの「今ここにいる理由」がフォトフレームに入れられて並ぶ。そして、来場者にも質問に答えてもらうための用紙と収集箱を置いた。ある時、僕は収集箱から無造作に1枚取り上げた。

 「片方の眉毛を失ったから」

 後でわかったが、それは当時福岡在住だったフジヒロシさんが書いたもの。

 片方の眉を失った原因は、次回話すことにしよう。(やまいで・じゅんや=アーティスト、アートNPO代表。挿絵は鈴木ヒラクさん)

=(11月23日付西日本新聞朝刊に掲載)=

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