江口寿史展
EGUCHI in ASIA
2024/11/09(土) 〜 2025/01/12(日)
福岡アジア美術館
山出淳也 2021/02/02 |
アートの価値ってなんだろう
アートは時に投機対象になる。
世界に一つしかない作品はそれだけで希少性が高い。世界のビジネスパーソンはまだ無名の若手アーティストを物色する。もし選んだアーティストやその作品が将来評価されれば、自分の審美眼、すなわちまだ見ぬ価値を見抜く力がある人だと一目置かれる。だからこそ、最近のアート界でパワーを発揮する著名な収集家はファッション業界の方が多い。つまり、流行を作る人たちだ。
彼らにとって高価な作品の優先度はそれほど高くない。金さえあれば買えるからだ。もし高価なものを買うなら、とびきりの金額のもの。できればそのアーティストの史上最高値で競り落としたい。それがニュースとなり、世界を一周するから。
アーティストとして活動し始めた30年ほど前。自分の作品を販売してくれる専属の画廊に属すことが、プロのアーティストの一歩目だと信じて疑わなかった。
僕も今から20年ほど前、ニューヨーク滞在中に画廊がつき、彼女たちの営業努力で作品が買われていった。時には収集家の自宅に招かれ、パーティーに参加した。空港まで黒塗りの高級車が迎えに来た。豪華な邸宅のプールサイドでシャンパンが振る舞われた。絵に描いたような光景に僕は笑いそうになった。
作品を買ってくれた収集家は、僕よりも幾分若かった。彼は僕に「アジア人の作品を最近はコレクションしてるんだ。以前はアフリカに凝ってたくさん集めた。エキゾチックだからね」と言って、ウインクしてきた。なんだかすごくガッカリして、その後彼らとは何を話したのか、どうやって帰ったかすら覚えてない。
海外の国際的な展覧会において、人種や国籍のバランスをとることが当たり前になって久しい。政治的・社会的に公平、公正を推奨する態度は「ポリティカル・コレクトネス」と呼ばれている。最近では、日本でも男女比をなるべく均等にと意識した展覧会もある。よく分かる。
だけど天邪鬼な僕は属性ではなく、作品そのものを評価して選んだと言われたい。(やまいで・じゅんや=アーティスト、アートNPO代表。挿絵は鈴木ヒラクさん)
=(11月25日付西日本新聞朝刊に掲載)=
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