ホキ美術館所蔵名品展~超絶リアリズム絵画~
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山出淳也 2021/04/20 |
ヤマモトさん
2010年、清島アパートは、アーティスト専用アパートに生まれ変わった。
毎年1月に公募を行い、8人程度の多様な創作者がアトリエや生活の場として活用している。さすがに10年も継続すると、ここは地域の日常の風景に変わり、「清島の〇〇くん」と居住者は認識される。
中にはこのアパートに滞在後、別府市内に居を構える者や、出会いを得て結婚した者もいる。彼らからの口コミで移住した者も増えてきた。今では別府の人口の0・1%、120人ほどの創作者が住む町へとなった。
アーティストが恒常的に町に住むことで、僕たちの活動範囲は広がった。例えばその一つが福祉施設でのワークショップ。この取り組みは大分県の事業となり、今期も実施されている。
アーティストは独自の表現を見つけるために切磋琢磨(せっさたくま)する。そのため、彼らが10人いれば10通りの異なる表現や考え方が生まれる。つまり多様な価値が同時に共存しているということだ。それに触発され、何かしらの表現を始めた人もいる。その1人が地元住民のヤマモトさんだ。
清島アパートが会場となった2009年の芸術祭開催時のこと。不安がる市民を代表して、彼は偵察にやってきた。「皆、真剣に制作しよって驚いた。東京芸大を出た子もおる。田舎におったら会うことないもん。気さくに話してくれるけん、うれしかった」と当時を振り返る。
彼らと過ごすのが楽しいと言うヤマモトさん。この町を訪れるアーティストで彼のことを知らない者はいない。最近はアーティストの顔を印刷したお面を作ることに凝っている。世界的彫刻家アニッシュ・カプーアの個展を開催した時には、オープニングに来られなかった彼の代わりに、お面をつけて観客と記念撮影に応じる始末。「カプーアさんに怒られないかな」と心配したが、その写真を見て本人も大変に喜んだ。
「ヤマモトさんは混浴温泉世界が生んだ最高傑作だ」。芸術祭総合ディレクターのセリザワさんは、楽しそうにそう話してくれた。(やまいで・じゅんや=アーティスト、アートNPO代表。挿絵は鈴木ヒラクさん)
=(1月6日付西日本新聞朝刊に掲載)=
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