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西方に極楽あり 4 展覧会のタイトルに悩むその2【連載】

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末吉武史
2018/09/11
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展覧会タイトル②

僕はこれまで「空海と九州のみほとけ」「九州仏」など、九州に特化した仏教美術展を企画してきました。

このように言うと生粋の九州人という感じがしますが、実際は九州には縁もゆかりもない奈良県出身者です(そもそも「九州」という大雑把な括り自体がヨソモノ的ですね)。実家の近くには中将姫伝説の当麻(たいま)曼荼羅で知られる当麻寺や、『往生要集』を著した恵心僧都源信の生誕地があり、西には「山越阿弥陀図」さながらの二上山(にじょうさん)が望まれます。

よく「どうして仏像をやろうと思ったのですか?」と尋ねられますが、多分こうした大和路の風土や浄土信仰の原点みたいな環境が関係していて、今回の展覧会にも繋がっているのだと思います。

それから高校、大学とどんどん西に移動し、思いもよらず福岡に来て今年で25年目になりました。福岡は食べ物が美味しく、街に活気があって人情も明るく、とても住みやすいところです(奈良人としては海があるのが最高ですね)。今ではすっかり馴染んで、家では息子に「宿題したと?」とか言っています。ただ、自分の中にある根っこの部分と九州の風土や文化との間に、微妙にかみ合わない部分があることは仕事や生活の中でずっと感じてきました。僕の場合、その違和感が九州で仏像を研究する原動力になっていて、仏像を九州と畿内という複眼的な視点で見ることにも役立っているようです。

今回の「浄土九州」というタイトルは、日本列島の西にある九州を西方極楽浄土に見立てたものです。しかし、もうひとつ個人的なレベルで言えば、自分の人生をかけて過ごす場所や時間を浄土に見立ててもいいのではないか、という意味も込めたつもりです。

浄土教的な解釈とは違うのですが、今回はそんなことも意識しながら展覧会タイトルを名付けました。

※写真(相島の猫)は本文と関係ありません。

=2018年6月12日福岡市博物館ブログに掲載=

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