九州、山口エリアの展覧会情報&
アートカルチャーWEBマガジン

ARTNE ›  FEATURE ›  連載記事 ›  まなざしの果実 熊谷守一展から<2>【連載】

まなざしの果実 熊谷守一展から<2>【連載】

2020/01/08 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

熊谷守一(1880~1977)は97年の生涯で、自らを取りまく草花や動物、虫、人間の「いのち」を等しく見つめ、洗練された構図で描き出した。絵は守一と画題との対話の実りのようでもある。「モリカズ様式」と呼ばれる独自の境地を拓(ひら)いた作品世界を5回にわたって紹介する。

「土饅頭」(1954年、北九州市立美術館蔵)  

「モリカズ様式」の特徴の輪郭線が画面に表れるのは56歳のころだが、様式の確立は70代ごろ。平たんな道のりではなかった。
  「売るための絵」を描けない守一は、困窮する生活の中で3人の子を亡くす。2歳の次男陽を亡くした時、死に顔を描き始めるが「“絵”を描いている自分に気がつき、嫌になって止めました」(「蒼蠅」1976年)という。悲しみ、哀悼、感情があらわになるような「絵」を避けたということだろうか。

「畳の裸婦」(1962年、東京国立近代美術館蔵) 


  「土饅頭」は25歳時に生活のため記録画要員として樺太調査隊に同行した際の素描を元にし、半世紀後に描いた。死を悼む墓碑や献花も、大地と空の間で抽象化している。「畳の裸婦」は80代の作品。畳の直線と裸婦の曲線という「かたちの妙味」が守一の関心の中心にある。「死よりも生の方へ執念が向いている」。森智志学芸員は語る。=12月18日西日本新聞朝刊に掲載=

連載1はこちら

おすすめイベント

RECOMMENDED EVENT
Thumb mini f84363516d

つきなみ講座10月
「珠玉の近代絵画─「南国」を描く。」展の見どころ紹介 ①

2025/10/18(土)
福岡市美術館 1階 レクチャールーム

Thumb mini f1026bf97a
終了間近

コレクション展 (古美術)
仙厓展

2025/08/26(火) 〜 2025/10/19(日)
福岡市美術館

Thumb mini b6f84e03a0
終了間近

特別展
古代エジプト・ ふしぎ発見!
―ナイルの贈り物と秘められた物語―

2025/09/09(火) 〜 2025/10/19(日)
下関市立美術館

Thumb mini 12669effc1
終了間近

ながさきピース文化祭2025
皇室の名品と長崎―皇居三の丸尚蔵館収蔵品展

2025/09/14(日) 〜 2025/10/19(日)
長崎県美術館

Thumb mini a822945d39

ジャネット・カーディフ《40声のモテット》

2025/10/17(金) 〜 2025/11/16(日)
長崎県美術館

他の展覧会・イベントを見る

おすすめ記事

RECOMMENDED ARTICLE
Thumb mini 7da477bf5d
連載記事

まなざしの果実 熊谷守一展から<1>【連載】

Thumb mini 42ca35e737
連載記事

まなざしの果実 熊谷守一展から<5最終回>【連載】

Thumb mini 30c34c4c4d
連載記事

まなざしの果実 熊谷守一展から<4>【連載】

Noimage
連載記事

遮られる世界 パンデミックとアート 椹木野衣<84> 【連載】開かれる世界 異常事態の渦中で 取り戻される日常

Thumb mini ba3135c76e
連載記事

遮られる世界 パンデミックとアート 椹木野衣<83> 【連載】コロナ禍の変化 国内の文化資源だけで 示唆に富んだ企画展も

特集記事をもっと見る