国立カイロ博物館所蔵
黄金のファラオと大ピラミッド展
2017/07/08(土) 〜 2017/08/27(日)
09:30 〜 17:30
福岡市博物館
アルトネ編集部 2017/08/23 |
古代エジプトのさまざまな出土品が展示される「国立カイロ博物館所蔵 黄金のファラオと大ピラミッド展」。その展示品のひとつを深く掘り下げるコラムを福岡市で活躍するボードゲームクリエイター/アーティストの津村修二氏に寄稿いただいた。(編集部)
現在、福岡市博物館で開催中の「黄金のファラオと大ピラミッド展」。その展示品の中に世界最古の盤上遊戯と考えられている「セネト」の一種《カーの木製ゲーム盤と駒》(紀元前1294~1279年頃)があります。このゲーム盤は書記カーへの供養文が側面に刻まれており、彼の墓に副葬されたもの。セネトは10マス×3列の30マスで構成されていますが、このゲーム盤は「20マスゲーム」の並びになっています。
●「セネト」とはどんなゲームか?
この世からあの世へと死者が無事に通過するための旅の護符として副葬されていたセネト。ツタンカーメン王(紀元前1342~1324年頃)の墓から出土されたことでも有名です。さて、セネトとは一体どんなゲームなのでしょうか?
諸説ありますが、ここではセネト歴史学者ティモシ―・ケンダルの提唱する説を基にルールを紹介します。
糸巻き型の駒と円錐型の駒に分かれて2人で遊びます。左上にある太陽のマスからアルファベットの「Z」のように進ませ、右下のゴールから自分の駒5個(または7個)全てを盤の外へ出したプレイヤーの勝ちです。
左上から順に駒を1個ずつ交互に並べたらゲーム開始。サイコロの代わりに4本の投げ棒を使用します。その結果に従い、自分の駒5個のうちのいずれか1個を進ませます。基本的には平らな面が上を向いた数の分だけ進めますが、平らな面が全部下を向いたときだけ例外で5マス進めます。1つのマスには1個しか入れません。ただし、相手の駒と同じマスに入ったら、相手と自分の駒の位置を交換します。特筆すべきは2個以上並列する相手の駒がいるマスには入れないというルール。どう上手く入らせないように進ませるか。これが戦略的な思考を必要として楽しいです。
また、ヒエログリフ(古代エジプトの象形文字)で描かれた15番目、26~30番目のマスにはそれぞれ意味があり、特殊なマスとなっています。ここでは長くなるので割愛しますが、興味のある方は調べてみて下さい。
●盤上ゲームの始まりは占い
セネトのような盤上ゲームが生まれる前、占いのための道具としてサイコロがずっと早くに存在していました。その起源は驚くほど古く、少なくとも紀元前一万年頃には木の実、小石、動物の踝の骨など自然物を用いたサイコロ(いびつな立方体であり、6面ではなく4面であった。アストラガルスと呼ばれた)が使用されていたということがわかっています。何が出るかわからない予測不能な偶然性、すなわち人間がコントロール出来ない事象を発生させるサイコロは神の意志を示すとされ、氏族の運命、狩猟の成功、危険の回避、天候を占う道具として用いられていました。現代でも履物を空中に飛ばしてその表裏で明日の天気を占ったりしますが、それもサイコロ占いの名残と言っていいでしょう。そこから氏族の長(後に神官や王)に見立てた駒をサイコロの出た目によって盤上を進ませる、儀式が催されるようになり、時代の変遷とともに祭儀から盤上遊戯へと移行していきました。
●現代に息づく「セネト」
今も遊ばれている、すごろくを始めとする将棋・チェスを含めた盤上ゲームの全ては「セネト」など古代のレースゲームが起源。どれほど歳月が経っても、サイコロを振って一喜一憂する私たち人間の本質はさほど変わっていないのかもしれません。
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