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「パリ→池袋→福岡・モンパルナス-芸術家が街に出る」 ピカソ、藤田嗣治らも展示 九産大美術館【コラム】

2018/07/21 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

芸術家にとって、街とはどんな存在なのか。彼らが集った昔のパリと池袋、そして福岡の様相を振り返り、創作活動と街との関係を見つめ直す展覧会が九州産業大学美術館(福岡市東区)で開かれている。所蔵品約40点を並べたが、主役はあくまで街である。

ピカソ、マティス、モディリアニ、藤田嗣治…。名だたる画家の版画が展示室にそろう。画風は異なるが、パリ・モンパルナス地区に住んだことは共通する。20世紀初頭、同地区の自由な空気と安い物件に吸い寄せられ、多くの若手芸術家がアトリエを構え、カフェで親交を深めた。

福岡県飯塚市出身の画家、野見山暁治さん(97)もその一人で、インタビュー映像が上映されている。「カフェに行けば会うんだ。(スイスの彫刻家)ジャコメッティは夜11時ごろに来て石こうで汚れた手を洗い、『疲れた』と言って飲んでいたよ」と野見山さんは懐かしそうに語る。

九州派を率いた桜井孝身が1956年に制作した[足」は初公開の作品という


東京・池袋も昭和初期から戦前にかけて100棟以上の貸しアトリエが立ち並び、1930年頃に最盛期を迎えた後に「池袋モンパルナス」と呼ばれた。銭湯が情報交換の場だった。野見山さんや17日に亡くなった熊本市の彫刻家、浜田知明さんら池袋で暮らした作家の作品も展示している。

福岡ではパリや池袋のようなアトリエ村は形成されなかったが、50~60年代に前衛美術集団「九州派」が活動した福岡市街地をモンパルナスに重ね、九州派のリーダー、故桜井孝身さんの初公開作などを並べた。

SNS(会員制交流サイト)が存在しない時代、若手芸術家たちはアトリエの外に繰り出し、互いの作品を批評しながら成長した。芸術談議の大切さは今も変わらない。それが街の活性化にもつながる。福岡市街地に50カ所ほどある美術館やギャラリーの位置を示した地図を見ながら、福岡の潜在力の高さを感じた。(野村大輔)=7月18日西日本新聞朝刊に掲載=

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