九州、山口エリアの展覧会情報&
アートカルチャーWEBマガジン

ARTNE ›  FEATURE ›  コラム ›  2019年九州・山口展覧会入場者数ランキング ARTNE調べ【コラム】

2019年九州・山口展覧会入場者数ランキング ARTNE調べ【コラム】

Thumb micro 6e69b4f50a
アルトネ編集部
2019/12/27
LINE はてなブックマーク facebook Twitter

九州・山口の展覧会情報やアートに関連情報を発信する WEB マガジン ARTNE(アルトネ)は 元号が改まった2019 年も各施設に協力いただき、たくさんの展覧会をご紹介してきました。その情報発信で培ったネットワークを駆使し、恒例となった展覧会入場者数のアンケートを今年も実施。美術館・博物館からの回答を元に作成した独自の<入場者数ランキング>をもとに 2019 年の九州・山口展覧会シーンを振り返ります。

対象期間:2019年1月以降に開会~2019年12月。 調査対象施設:当サイトの美術館・博物館リスト登録館に5万人以上動員した展覧会のヒアリングを実施し、回答があった館のみ掲載。
一部の館は公開用の概数。

 

強コンテンツの上にロングランで死角なし「ジブリの大博覧会」

 

まずはなんと言っても福岡市博物館の「ジブリの大博覧会〜ナウシカからマーニーまで〜」。福岡市博物館としては「人体の不思議」展(1998年7/12-8/30)の動員を上回り歴代最高を記録しました。実は「ジブリの大博覧会」は、3/15-6/16までの88日間というかなりのロングラン。第2位のハウステンボス美術館(ハウステンボス内 )「鈴木敏夫とジブリ展」、第3位のいのちのたび博物館夏の特別展「探検!両生類・は虫類の世界」、第4位の熊本市現代美術館「デザインあ展 in KUMAMOTO」も比較的長い会期設定です。今後はファミリーでお出掛けできそうな多くの動員が見込める展覧会を長期にわたり開催することが主流になってきそうです。混雑しがちな大型展の1日あたり入場者数が抑えられることは、鑑賞環境としては歓迎すべきことでしょう。ただ、絵画や書跡など展示日数が限定される繊細な作品ではそもそも長期に展示することは困難。さらに、会期が長いと”中だるみ”も付き物ですので、話題作りの工夫も必要です。

『ジブリの大博覧会』内覧会 これが、もう一つのジブリストーリー!【レポート】より

 

コラボ企画のその先は?

 

いわゆるアニメや体験型ではない、"普通の展覧会"はランキングの半分ほどを占めています。その中で九州国立博物館特別展「室町将軍展」と福岡市博物館「侍~もののふの美の系譜~The Exhibition of SAMURAI」は、従来の美術愛好者たちだけでなく、刀剣乱舞ファンを狙いうちした、近いタイプの展覧会だったと言えます。もはや説明不要かもしれませんが、「刀剣乱舞-ONLINE-」は、DMM GAMESとニトロプラスが手がけるPCブラウザ&スマートフォン向け刀剣育成シミュレーションゲーム。ゲームに登場する刀剣を見に全国からファンが殺到する現象が2015年ごろから継続しています。両展覧会ともに、グッズやパネル展示など数々のコラボ企画で盛り上げ、特に初日には多くのファンが殺到したようです。

特別展「室町将軍 戦乱と美の足利十五代」の開催初日に長い列をなした物販コーナー


開催途中のためランク対象外となっていますが、すでに10万人を突破している九州国立博物館特別展「三国志」では声優コラボ版の音声ガイドやゲームとコラボレーションした関連イベントが展開されていたり、福岡市美術館で開催中の「不思議の国のアリス展」では展覧会内でリアル脱出ゲームがおこなわれていたり…。コラボ企画と特別展をセットで楽しむという文化も珍しくなくなってきました。コラボ企画目当てで来場した新たな観客をいかに再訪させられるか?が真の勝負かもしれません。

 

 

コレクション展の未来は?

 

さて、残念ながら、昨年コラムの宿題となっていたコレクション展ランキングは、期間設定や特集企画に入場したかどうかが判別できないなどカウントが難しく今年は実現していません。ですが、2019年はコレクション展示という視点で切り取ると、特徴ある年でした。

第8位となった福岡市美術館リニューアルオープン記念展は同館コレクションを中心に据え、福岡アジア美術館開館20周年記念展「アジア美術、100年の旅」もコレクションが展覧会の中核を担いました。久留米市美で「久留米市美術館のコレクションing きょうも活動中」が開催されたり、山口県立美術館開館40周年記念でコレクションの「香月泰男のシベリア・シリーズ」が特別展示されたり、例年に比べて各館コレクションのベストメンバーを見られる機会が多かったと言えるでしょう。

「これがわたしたちのリニューアル」 福岡市美術館が新しくなりました!
LOVE FM「OUR CULTURE, OUR VIEW」より【コラム】
』より

また、熊本市現代美術館の『きっかけは「彫刻」。』展では、特別展示室にあたるギャラリーの前半が国立美術館巡回展で、後半は同じテーマのCAMKコレクション展という大胆な構成で同館のコレクションを紹介。反対に、九州国立博物館では、いわゆる常設展示室にあたる文化交流展示室で借用品を含んだ意欲的な特集展示が行われています。こういった取り組みは他館でも見られ、特別展示室は借り物だけ、コレクション展示室は館の所蔵品だけという固定観念を取っ払った展示は続いていくでしょう。借用品、所蔵品それぞれの良い点を引き出す柔軟なキュレーションが広がり、鑑賞者を楽しませてくれることを期待します。

 

と、最後はランキングとは全く異なる話になってしまいましたが、ARTNEでは、2020年も様々な展覧会情報を発信してまいります。みなさまの展覧会鑑賞のお役に立てれば幸いです。

おすすめイベント

RECOMMENDED EVENT
Thumb mini e794a50fea

北九州市立美術館 開館50周年記念
「足立美術館所蔵 横山大観展」スライドトーク

2024/04/13(土) 〜 2024/05/02(木)
北九州市立美術館 本館

Thumb mini b156a79869

収蔵作品展
センス・オブ・ワンダー

2024/03/12(火) 〜 2024/05/06(月)
都城市立美術館

Thumb mini 5ac71fa77e

春の特別展「カラーズ ~自然の色のふしぎ展~」

2024/03/16(土) 〜 2024/05/06(月)
北九州市立いのちのたび博物館

Thumb mini d9d6db5602

特別企画展
オードリー・ヘプバーン 写真展

2024/03/20(水) 〜 2024/05/06(月)
鹿児島市立美術館

Thumb mini fb2248f7fb

かみよりつぐかたち -紙縒継像-
新聞紙から生まれる動物たち

2024/03/23(土) 〜 2024/05/06(月)
みやざきアートセンター

他の展覧会・イベントを見る

おすすめ記事

RECOMMENDED ARTICLE
Thumb mini 09ca7ee094
コラム

【ホキ美術館の名品やディック・ブルーナなど】2024年、熊本県立美術館の注目展覧会!

Thumb mini de024c5e0e
コラム

「足立美術館所蔵 横山大観展」北九州市立美術館開館50周年/伝統美 斬新で奥深い 【コラム】

Thumb mini 8660a464f5
コラム

《北九州市立美術館 開館50周年記念「足立美術館所蔵 横山大観展」》大観をみる㊥「紅葉」 画面を彩る深紅の紅葉【コラム】

Thumb mini c912f426c4
コラム

【ピカソ・ミロから話題の画家初の大規模個展まで】2024年、長崎県美術館の注目展覧会!

Thumb mini c8ee698a85
コラム

【ロートレックから佐藤健寿まで】2024年、大分市美術館の注目展覧会!

特集記事をもっと見る