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まなざしの果実 熊谷守一展から<3>【連載】

2020/01/09 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

熊谷守一(1880~1977)は97年の生涯で、自らを取りまく草花や動物、虫、人間の「いのち」を等しく見つめ、洗練された構図で描き出した。絵は守一と画題との対話の実りのようでもある。「モリカズ様式」と呼ばれる独自の境地を拓(ひら)いた作品世界を5回にわたって紹介する。

かまきりとひがん花(1958年、婦人之友社蔵)

風貌や暮らしぶりから「天狗(てんぐ)」「仙人」とも言われていた守一。元々は健脚で、よく写生旅行にも出かけていた。「若い頃はほぼ徒歩で東京から岐阜まで帰省したことも」と森智志学芸員は明かす。
 だが76歳で脳卒中を患い、以来ほとんどの時間を東京の自宅と庭で過ごすようになる。家にはぎっしりと鳥かご。庭には、うっそうとした森。猫が気ままに行き交い、花が咲き、虫が飛び回る。午前中は守一を慕う若い画家らが訪ねた。午後は3~5時間の昼寝。「学校に行く」と称してアトリエに入るのは夜8時ごろだったという。

黒つぐみ   (1966年)

  「黒つぐみ」は、多い時は15羽を超えた熊谷家の鳥の中で、10年余りも長生きした。「椿(つばき)」など本展出品の他の絵にも登場する。「かまきりとひがん花」は誇らしげに見えるカマキリの姿がユーモラスだ。昼間、庭の動植物との交歓が、夜の絵筆に注ぎ込まれた。=12月24日西日本新聞朝刊に掲載=

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