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絵に宿る風土 大地の力展⑤完 生命の躍動 息づく

2021/11/23 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

 鹿児島市出身で、戦後、熊本市に居を置いた海老原喜之助は通称「エビ研」と呼ばれる画塾を創設して後進の育成に努めた。

 「燃える」はその時期の作品。佐々木奈美子学芸員は「『九州で画家と言えるのは坂本繁二郎と自分だけ』と言っていたほど、使命感を背負い、思い詰めていた。戦後の長いトンネルから立ち上がろうとした時、原初(の衝動)へ向かっていった」と思いやる。

海老原喜之助「燃える」(1957年、新潟県立近代美術館・万代島美術館蔵)

 めらめらと燃える炎が神々しく、格子のシルエットを際立たせる。

 漆黒にたたずむ凜とした人物像が、本の装丁画としても数多く起用されている田中千智の本作は、2016年、筑後市の宿泊施設のアートプロジェクトに参加した際、福岡県広川町の弘化谷古墳に取材したことで導かれた。

田中千智「古墳の中で眠る人」(2017年、個人蔵)

 静謐(せいひつ)さが際立つ従来の作風とは一線を画し、古墳の装飾画は、細胞のうごめきをも感じさせる。立ち上がる前の悠久の眠り、何かが始まる予感が漂う。生命の躍動がここに息づいている。

(担当:大矢和世)

****

 久留米市美術館で、開館5周年記念展「九州洋画Ⅱ 大地の力 Black Spirytus」(西日本新聞社など主催)が開かれている。12月12日まで。「九州ゆかりの近代洋画」を軸にコレクションを構築する同館。特に風土を反映した力強い表現に光を当てる企画展だ。黒田清輝、坂本繁二郎といった巨匠から気鋭の若手まで幅広い作品78点が並ぶ。筆跡に宿った迫力の一端を届けたい。

=(11月20日付西日本新聞朝刊筑後版に掲載)=

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