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2022年九州・山口エリア 展覧会入場者数ランキング 1位は『北斎展』

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秋吉真由美
2023/02/17
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 コロナ禍も3年目となった2022年。事前予約制を導入した展覧会も増え、新たな楽しみ方も定着しているよう。また、ワークショップなどの体験イベントも開催され、感染対策を講じて工夫を凝らしながらではあるが、以前の楽しみ方に近い動きも復活してきた印象だ。

 アルトネ編集部では、美術館・博物館の回答をもとに2022年に開催された展覧会入場者数のランキングを集計。上位3位の各館のコメントとともに2022年の九州・山口エリアのアートシーンを振り返ります。

ファミリー層に人気『昆虫博』

 『アニメージュとジブリ展』『連載完結記念ゴールデンカムイ展』『ライデン国立古代博物館所蔵 古代エジプト展』など根強い人気を誇る展覧会が並ぶ中、3位には北九州市立いのちのたび博物館で開館20周年を記念して開かれた『夏の特別展「昆虫博2022」』がランクイン。8万1,554人の来場者数を記録した。

 同展では、昆虫標本や化石などのほか、ヘラクレスオオカブトなど生きた昆虫も展示。「じっくりと見られる標本と、生きている姿の両方を合わせることで、よりお楽しみいただけたのでは」と北九州市立いのちのたび博物館の昆虫担当学芸員・蓑島悠介さん。「博物館での楽しい経験や思い出を、なるべく多くの方にもっていただくことで、博物館や自然への関心、生きものが好きな人への理解につなげたい」という。

 感染症対策で入場の事前予約制を導入し、入場者数の上限を設けていたものの、夏休みシーズンであったことからファミリー層の来場も多く、盛況のうちに閉幕した。

 「全国の博物館は、コロナ禍において展示手法だけではなく、館内の動線など多くのことを考えたことと思います。それらの中での成功や失敗を、より良い展示やサービスにつなげていくことができれば」と蓑島さん。

 

ゴッホ人気の高さを実感

 2位は、入場者数12万9,293人の福岡市美術館で開かれた『ゴッホ展』。ゴッホ作品の世界最大の収集家であるヘレーネ・クレラー=ミュラーが開いたクレラー=ミュラー美術館と、ゴッホ美術館のコレクションから計52点のゴッホ作品が展示された。

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 「コロナ禍にも関わらず、多くの人に来場していただき、改めてゴッホの人気の高さを実感した」と福岡市美術館の学芸係長・山木裕子さん。「実際に作品の前に立ち、美術に浸る時間が求められていたのだと感じた」と明かす。

 「コロナ禍で自由に活動できなかったことをバネに2023年はアートシーンがもっと活性化していくことを期待したい」と山木さん。「当館を含め美術館もコロナ前の実績、そしてコロナ禍の経験を活かしつつ、おもしろい試みを見せていければ」

 

行動制限のないGW、北斎人気をさらに後押し

 入場者数13万5,955人を記録し、2022年の入場者数1位となったのは、九州国立博物館で4月16日から6月12日に開かれた『北斎展』。県内外から北斎ファンが駆け付けた。

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 「北斎といえば、『赤富士』や『波』など、誰もが名前を聞いただけで代表作をイメージできるほどのビッグネーム。“世界で最も有名な日本の画家”である葛飾北斎の展覧会は、普段あまり博物館に行かない人にも関心をもっていただき、気軽な気持ちでご来館いただけたのでは」と九州国立博物館の学芸部長・河野一隆さん。

 2022年のゴールデンウイークは、コロナ禍で初めて行動制限がなかったことも背中を押したよう。「2021年までは新型コロナウイルス感染症の影響が強く、思うように入場者数は伸びませんでした。『博物館に行きたくても行けなかった』そんなお客様の思いが、北斎展の開催と重なり、入場者数1位につながったのかもしれない」という。

 また、同展では、北斎が晩年に魔除けを願いながら毎朝書き続けたという重要文化財《日新除魔図(にっしんじょまず)(宮本家本)》の全場面を本邦初公開。219枚の連作は圧巻で、来場者を魅了した。

重要文化財《日新除魔図(宮本家本)》葛飾北斎 [彩色のある1枚(9月12日)のみ前期展示]
江戸時代 天保13~14年(1842-43)
九州国立博物館(坂本五郎氏寄贈)

 「北斎展の目玉である重要文化財『日新除魔図』は、当館所蔵で門外不出の作品をすべて撮影OKとしたことも大きかった」と河野さん。「ご自身の誕生日や記念日の日新除魔図を撮影し、SNSなどで投稿される方も多くいらっしゃいました」

 現在の太宰府は、海外からの観光客も増えてきているという。「博物館に行くことは“不要不急”ではありません。博物館は癒された気持ちを回復し、心の健康に欠くことのできない場所。『ちょっとのぞいてみようかな』という気持ちで、博物館や美術館に足を運んでいただけたら嬉しい」と2023年の来場に期待を寄せる。

 「ネット上で簡単に情報を得られる時代ですが、展示室に入ると、実際に実物を見ないと味わえない感動が待っています。そんな感動を昨年よりもっと多くの皆様に味わっていただけたら」とも。

 

 2023年も博物館や美術館でさまざまな作品との出合いが待っているはず。アルトネ読者の皆さんと、一つでも多くの作品との出合いがあふれる年になりますように。

 

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